介護の不安は解消できる

認知症リスクをチェックする新しい評価尺度「J-MCI」とは?

症状が見られ始めてから受診するまでに平均4年かかる
症状が見られ始めてから受診するまでに平均4年かかる

 前回、認知症の診断に必要な検査の方法についてお話ししました。認知症は早期に診断し、早期に治療を開始すると、病状の進行をある程度遅らせられると知られています。一方、ある調査では「認知症の症状が見られ始めてから病院を受診するまでに平均4年かかる」との報告もあり、解決が必要な問題とされていました。

 そこで、私が理事を務める日本老年精神医学会は、認知症のリスクをチェックできる新たな評価尺度「J-MCI」を開発しました。日々認知症患者の診療にあたる認知症専門医らによって厳密に選ばれた13の質問項目に本人と家族が「はい・いいえ」で回答すると、「認知症の傾向あり」「グレーゾーン」「問題なし」のいずれかに判定されます。

 これまでJ-MCIを受けた方たちの結果を解析したところ、本人は家族に比べて3分の1程度症状を軽く評価する傾向が見られました。そのため、アルゴリズムを用いて両者の結果が同じになるよう回答に重要度をプラスし、誰が回答しても同じ判定ができるようになりました。

 具体的なチェック項目は次の通りです。

①ものの名前が出てこない、「あれ」「これ」を多用する②曜日や日にちがわからない③薬の管理ができない④(医師・薬剤師の)指導内容を覚えていない⑤生返事で、何を聞いても「ハイ」「大丈夫」などと答える⑥些細なことで泣き、大喜び、激怒等につながる⑦同じ行動を繰り返す(発言内容、日課、散歩コースなどの固定化)⑧時間を過度に気にして、予定時間の前に行動を開始する⑨最近の物事を思い出せない⑩処方箋や診察券を紛失する⑪検査室へたどりつけないなど医療施設内で迷う⑫よだれや唾液が増える⑬ろれつが回らず、言語が不明瞭である

 昨年5月から、実際に一部の健康診断で取り入れられています。現在は、自宅からウェブサイトにアクセスし簡単に受けられるよう準備を進めているところです。

▽朝田隆(あさだ・たかし)1982年東京医科歯科大学医学部卒業、83年同大精神科、95年国立精神・神経センター武蔵病院、2001年筑波大学精神医学教授を経て、15年からメモリークリニックお茶の水院長、筑波大名誉教授、東京医科歯科大学特任教授を務める。

関連記事