がんと言われたら「がん相談支援センター」へ…不安に答えてくれる

がん支援センターはどの段階でも相談できる場所
がん支援センターはどの段階でも相談できる場所

「がん相談支援センター」は、専門的な医療を提供する「がん診療連携拠点病院等」に設置されている相談窓口。全都道府県にある。2人に1人ががんを発症する時代だからこそ、がん相談支援センターとはどういうところかを知っておきたい。岐阜県にある中部国際医療センターがん相談支援センターの野村愛さん(認定がん専門相談員・医療ソーシャルワーカー)に聞いた。

 がん相談支援センターは、がんの疑いから、がんと診断された直後、治療開始前、治療中、治療後の経過観察中など、どの段階でも相談できる場所になる。

「質問の内容は、がんにまつわることなら全てが対象です。がん患者さん本人の相談はもちろん、ご家族、がん患者さんと接する職場の方など、どなたにも門戸を開いています。相談は無料です」

 通院患者(その家族ら)に限らない。別の病院に通っているが、そこにがん相談支援センターがない場合、通院している病院にがん相談支援センターがあるものの別のがん相談支援センターに相談したいという場合もOKだ。

 乳がんを宣告されたばかりのある女性は、がん治療後に仕事との両立がどうなるか、医療費を貯金で払い切れるのか、不安でたまらないと話す。一方で、「がん相談支援センターに相談」となると何を質問すればいいのか、不安が漠然としすぎて現段階では見当がつかないというが──。

「がん相談支援センターへの相談は何度でもできます。いま抱えている不安や悩みを気軽に相談してほしい。話すことで心が軽くなることもあります。話を伺いながら、一緒に気持ちの整理をするお手伝いもします」

■診断されたら早めに動く

 30~59歳の働き盛りの年代でがんを発症する人が増えている。国が「がんと仕事の両立」を支援していることもあり、「がん治療を受けながら仕事をどう続ければいいのか」という質問が少なくない。

「たとえば中部国際医療センターでは、産業保健に関する幅広いサービスを無料提供している公的機関、産業保健総合支援センターや公共職業安定所と協定し、定期的に無料相談会を開催しています。主治医と会社の連携の中核となって患者さんに寄り添いながら就労支援をする両立支援コーディネーター、労働・社会保険の法律の専門家である社会保険労務士にも必要に応じてつなぎます」

 会社にがんのことを報告するのか、しないのか(しないという選択肢もある)。報告するとしたら、どのように伝えるのか。単に「乳がんのステージ2です」と伝えても、病気の知識がなければ戸惑ってしまう。

 がん治療をしながら仕事を続けたいという希望があるなら、治療計画、通院予定、治療後にどのようなことが予想されるのか&いままで通り働けるのか(「抗がん剤の副作用でフルタイムの勤務は難しい」「倦怠感がひどく通勤ラッシュは避けたい」など)、休職の可能性など、各人の職場、仕事内容、人間関係に応じた情報を具体的に伝える必要がある。

「勤めている会社の就業規則を確認してもらい、患者さんが最も働きやすい形を探っていく。また、お金の面においては利用できる制度がいくつかあります。高額療養費制度、限度額適用認定証、傷病手当金など。加入している生命保険会社への確認、診断書の取り寄せも自ら動かなくてはなりません」

 加入している保険組合では、高額療養費制度とは別に、独自に付加給付制度を設けているところもある。申請してからお金が戻ってくるまで数カ月かかるので、がんと診断されたら早めに動きたい。

 がんと診断され平時の精神状態と違っているところに、検査や入院準備、仕事の引き継ぎなどで多忙となれば、何から手をつけていいか混乱してくる。一つ一つ確認し、サポートするのも、がん相談支援センターの役割だ。

 実は野村さんは、がん経験者。抗がん剤で悪心がひどく、つらい思いをしたが、主治医から勧められた薬を飲んだところ症状がすっと緩和されたという。

「抗がん剤の副作用がひどければ、遠慮せずに言ってほしい。主治医の先生に直接伝えるのはちょっと、という方もいるかもしれません。自病院の患者さんであれば同意をいただいて私たちから主治医に伝えることもできます。副作用を軽減する方法は薬も含めてたくさんあるので、ぜひ相談してください」

 がんと付き合っていく際のよろず相談所──それががん相談支援センターだ。足を運ぶところから始めたい。

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