健康長寿に役立つ高齢薬膳

【納豆】滞った「血」を巡らせる作用が高く脂質異常を改善

血流アップ納豆
血流アップ納豆(C)日刊ゲンダイ

 健康診断の結果、気がつくことが多い「脂質異常症」。まあ、大丈夫だろうと思ってそのままにしがちですが、おおいに注意が必要です。

 脂質異常症は、血液中の中性脂肪やLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が過剰になった状態、あるいはHDLコレステロール(善玉コレステロール)が低い状態をいいます。

 とくに自覚症状は現れませんが、ようは「血液がドロドロになった」状態です。そうなると、内皮細胞と血管壁の間にLDLコレステロールが侵入、次第に血管の壁を傷つける酸化LDLに変化し、血管拡張作用を阻害します。さらに、免疫細胞は酸化LDLを異物として認識して捕食し、その後、動けなくなった免疫細胞は「ブラーク」と呼ばれる物質となって血管の壁に堆積していきます。その結果、動脈硬化が引き起こされるのです。

 原因は主に食べすぎ、飲みすぎ、運動不足といった生活習慣が挙げられますが、ストレスや遺伝的な要素が関係している場合もあります。

 動脈硬化は、脳梗塞、心筋梗塞、脳出血といった命に関わる疾患につながります。とくに、加齢によって動脈硬化が進みやすいシニアにとっては、脂質異常症と判断された時点での速やかな対応が、重篤な疾患の予防にとって重要です。

 中医学において、脂質異常症は主に「血」の巡りが滞った状態が関係していると考えます。「瘀血」(おけつ)と呼ばれる状態で、身体の末端にまで栄養が行き届かず、新陳代謝が低下して老廃物が身体にたまりやすくなっているのです。さらに、ドロドロとよどんだ血液の中に、脂肪をためこむという結果に陥ります。

 また、血の巡りが悪いと、慢性的な肩こり、関節痛、頭痛といったトラブルが見られ、身体にしこりができやすくなります。よって、がんなど悪性腫瘍のリスクも大。女性の場合は、子宮筋腫、子宮内膜症といった婦人科系の不調に悩まされる傾向があります。

 改善のためには、血行を促進する食材を取り入れることが大切です。おすすめは納豆。栄養学的にもその優れた健康効果で知られていますが、薬膳においても滞った血を巡らせる作用がとても高い「血液サラサラ食材」なのです。ぜひ、日頃からこまめに取り入れることをおすすめします。

 血行不良による肩こりなどの不調改善、ダイエット、手足の冷えにも威力を発揮します。また女性にとっては、シミ改善にもよい美容食材です。さらに、気持ちの落ち込みにも役立ちます。

 納豆の脂質異常症改善効果を高めるには、同じく血流をアップする働きがある、サバ、タマネギ、ピーマンなどと組み合わせるのがおすすめです。

 さらに、脂質異常症は、脂肪が含まれた「過剰な水分」が停滞する「痰湿」という状態からも引き起こされやすくなります。水分を排出する効果の高い海藻類も取り入れると効果的です。

■納豆高齢薬膳レシピ

血流アップ納豆

 血行を促進する納豆に、同様の効能があるタマネギ、ピーマン、余分な水分を排出する海苔を組み合わせた「血液サラサラ納豆」です。納豆が苦手な人も野菜の香味で食べやすくなります。ごはんにも、お酒のつまみにもおすすめ。

【材料】2人分
●納豆 2パック
●タマネギ 1/4個
●ピーマン 1個
●海苔 適量

【作り方】
 納豆と、みじん切りにしたタマネギ、ピーマン、添付のたれをあえて器に盛り、海苔を散らす。

池田陽子

池田陽子

薬膳アテンダント・食文化ジャーナリスト・全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。国立北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)で国際中医薬膳師資格を取得。近著「1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日」が好評発売中。

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