家計簿を見れば病気がわかる

リンゴ消費トップの長野「がん」「呼吸器疾患」リスクは低下するか

(C)日刊ゲンダイ

 リンゴの消費量(全国平均)は、1世帯当たり年間約12.3キロ。ミカン(12.5キロ)にわずかに及びませんが、もっともよく食べられている果物のひとつです。

 とはいえ、ミカン以上に消費地が偏っています。上位には長野、青森、岩手、山形、福島といったリンゴ生産地が並んでおり、1位の長野では、1世帯当たり33キロも消費されています。一方、下位には沖縄と、長崎や熊本などミカン生産地が入っています。ちなみに東京は28位、約10.6キロとなっていました。

 食べておいしいとはいえ、リンゴのビタミンCはミカンの10分の1ですし、他のビタミンやミネラルも決して豊富とはいえません。ところが「リンゴ1個で医者いらず」といわれるように、洋の東西を問わず、昔からリンゴは健康な食べ物とされてきました。

 リンゴには、抗酸化物質が豊富に含まれていることが分かっています。そのため世界中でさまざまな疫学調査が行われており、病気の予防効果が解明されつつあるのです。

 ヨーロッパ各国で行われた疫学調査によれば、リンゴ(ジュースなどの加工品を含む)を日常的に食べている人は、口腔がん、咽頭がん、食道がん、大腸がん、乳がん、子宮がん、前立腺がんなどにかかるリスクが、10~40%も減少するそうです。

 呼吸器疾患の予防効果にも、注目が集まっています。リンゴには、喘息や気管支炎を予防する作用があることが疫学調査で分かってきました。呼吸器は、常に空気中の酸素と接触しているため、酸化されやすい臓器です。リンゴの強力な抗酸化力が、酸素から肺や気管支を守ってくれるのだろうと考えられています。

 とはいえ、各県の消費量と、がんや呼吸器疾患の患者数(受療率)を見る限り、リンゴ効果は感じられません。しかし1位の長野でさえ、消費量は1世帯当たり1日90グラムに過ぎません。ヨーロッパの疫学調査の論文を見る限り、リンゴ効果を得るためには、毎日100グラム(中サイズのリンゴ半分)以上を食べる必要がありそうです。

 リンゴジュースでも効果があるとのことなので、その気になれば続けるのは難しくありません。ミカンと同様、試してみる価値はありそうです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。