家計簿を見れば病気がわかる

独身者は野菜不足だと決めつけられない

(C)日刊ゲンダイ

 独身者の家計簿で、主食系以外に気になるのが、野菜の消費です。よく「一人暮らしは野菜不足になりやすい」といわれていますが、どうでしょうか。

〈表〉は独身と2人以上世帯の1年間(2014年)の野菜消費金額です。家計調査の独身者のデータは購入金額のみで、購入量(重さ)は載っていません。ですから金額のみの比較になります。

 生鮮野菜を見ると、確かに独身のほうが購入額が少ないことが分かります。ただ2人以上世帯の人数は、総務省のデータによれば平均約3人となっています。つまり2人以上世帯では、家族1人当たり、年間約2万3000円分を消費していることになります。金額ベースで見る限り、60歳以上の独身男性や、35歳以上の独身女性のほうが、野菜を多く消費していることになるのです。

 加えて野菜サラダと野菜ジュースの消費金額でも、独身者が家族持ちを上回っています。しかも男性のほうが、女性よりも多く買っています。ただ女性は生鮮野菜をより多く買っているので、その分だけ節約できているともいえます。

 このように金額だけで比較すると、「独身者は野菜不足だと決めつけられない」ことが分かります。独身ならではの健康管理ができているといえるかもしれません。

 とはいえ、家族持ちよりも買い物は割高になりがちです。キャベツや白菜などを丸ごと買っても、使い切れずに結局は腐らせてしまうことも多いはず。そこで2分の1玉や4分の1玉を買おうとすると、丸ごとの値段よりも高めになります。そのため、使った金額ほどには野菜を食べていないと思われます。

 野菜不足は高血圧や糖尿病の原因のひとつです。50代男性の高血圧による死亡数(2014年)は、妻帯者24人、独身88人。数は決して多くはありませんが、独身者の死亡リスクは実に妻帯者の11倍にも達します(独身率24%で計算)。同様に糖尿病では、妻帯者117人、独身352人(50代男性・2014年)が亡くなっています。こちらは独身者の死亡リスクが約10倍です。

 もちろん野菜だけが原因ではないでしょう。しかし独身者の中には、野菜を効率的に取れていない人も少なからずいるのかもしれません。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。