家計簿を見れば病気がわかる

低所得者の2倍食費に金をかける高所得者

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「健康や寿命」と、「年収」とは、比例関係にあるといわれています。収入の多いほど健康で長生きでき、低所得の人は逆に病気がちで短命というのです。収入が多ければ、それだけ食費に金をかけることができ、栄養状態が良好だからと説明されています。

 そこで、食費にどのくらいの差があるのか、家計調査の数字を追ってみましょう。今回は、2人以上の勤労世帯の数字を使います。全世帯の数字よりも、そのほうがサラリーマンの実態に近いからです。

 まず家族構成ですが、世帯人数や構成に違いはほとんど見られません。低所得の家庭も高所得の家庭も、人数は3.3~3.5人程度に収まっています。また、65歳以上の高齢者の人数でも、所得差は見られません。ただ18歳未満の人数は、高収入世帯のほうが少なめです。多くの家庭で、子供が大学生以上に育っているからでしょう。

■年収1500万円以上の消費支出は300万円層の2・4倍

 消費支出は、年収とともに増えています。年収1500万円以上の層は、300万円の層の約2.4倍も支出しています。ただ、年収差ほどの開きはありません。高所得層ほど、貯蓄などに回せる余剰が多いということです。

 肝心の食料への支出(外食費を含む)ですが、やはり収入に応じて増えています。年収300万円の世帯では、70万円ほどですが、1500万円世帯になると、130万円以上も使っています。その差は約1.9倍。エンゲル係数(全支出に占める食料支出の割合)を計算してみると、300万円世帯では26.1%。年収が上がるほどエンゲル係数は下がる傾向にあります。しかし、1500万円世帯でも20.7%ですから、年収の多寡とエンゲル係数は、あまり連動していないようです。

 家族構成には、所得差がほとんどないのですから、家族全体が食べる量も大差はないはずです。しかし、食料支出は高所得者ほど大きいので、その分だけ上等なものを食べていると考えていいでしょう。単純に言えば、1500万円世帯は、300万円世帯と比べて、2倍ほど値段の高い食品を食べている計算になります。

 もちろん、高価な食品だから栄養価が高いというような単純な話ではありません。そこで次回は、購入している食品の明細を調べていくことにします。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。