がん保険 本当に必要ですか

<6>保険は「患者申出療養」には無力

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 健康保険の混合診療化が、マスコミでも話題になっています。先進医療は、すでに混合診療化していますが、今年の4月からは「患者申出療養」という新しい制度がスタートします。これは、日本ではまだ承認されていない主に海外で開発された医薬品や治療法などを、患者からの申し出に応じて混合診療として提供しようというものです。

 もちろん、何でもかんでもということではありません。たとえば海外で効果があるとされている抗がん剤を使う場合、まず患者自身が、国が指定する病院に対して治療の申し出を行います。それを受け、病院側が論文などをもとに安全性や有効性を評価し、実施計画を立て、国に申請書を提出します。国は原則6週間以内に実施の可否を判定します。そして可となれば、いよいよ治療開始となるのです。

「患者申出療養」は混合診療ですから、クスリ代は全額が患者負担になります。その他の医療費は健康保険の適用(3割負担)を受けることができます。従来、未承認薬を使う場合は自由診療と見なされ、かかった医療費の全額が患者負担でした。それが混合診療になる分、患者の負担が軽減されることになります。

 しかし、効果が高いとされる抗体医薬や分子標的薬は、1カ月分の値段が数十万円から数百万円もします。そのクスリ代は患者負担のままなので庶民にはまだまだ高いハードルです。国は、「効果が認められれば、それらのクスリも将来的に健康保険適用にする」と言っています。しかし医療財政的には、かなり難しいかもしれません。

 がん保険も、患者申出療養には無力です。入院給付金や通院給付金も、これに関しては出そうにありません。

 ただ、希望者が多ければ、いずれ保険会社は「患者申出療養特約」を必ず出してくることでしょう。上限1000万円とか2000万円といった保障が考えられます。

 そうなると、混合診療化が一層進むため、がん保険に加入しない限り、いい治療を受けられない時代が来るかもしれません。保険会社にとっては、好機到来といったところでしょうか。好むと好まざるとにかかわらず、我々はがん保険と真剣に向き合わなければならない状況に陥りつつあるのです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。