なりやすい病気は血液型でわかる

エコノミークラス症候群になりやすい血液型は何型?

血液型で病気の発症リスクがわかる
血液型で病気の発症リスクがわかる(C)日刊ゲンダイ

 ABO血液型といえば、性格診断、あるいは医学的には輸血と臓器移植くらいしか使い道がないといわれています。しかし、それは日本だけの話。世界では血液型と病気の関係が盛んに研究されています。しかも、すでにいくつかの病気になりやすい血液型や、そのメカニズムまでもが解明されつつあるのです。

 中でも、静脈血栓症の研究が進んでいます。静脈は血液の流れが緩やかなため、動脈よりも血液が固まりやすくなっています。とりわけ、ももや足の付け根付近の、皮膚から深いところの太い静脈には、下肢全体の血液が集まってきます。しかも、重力の影響でたまりやすくなっているため、血栓(赤血球や血小板が固まったもの)ができやすいのです。

 血栓ができると「深部静脈血栓症」という病名が付きます。血管が狭くなるため、ふくらはぎや足首がむくんできます。さらに重症化すると足全体が腫れて、痛むようになってきます。しかし、抗凝固剤や血栓溶解剤で治療できますし、死ぬようなことはまずありません。

 本当の危険は、血栓が剥がれて流れ出すことです。静脈は心臓に向かうほど太くなっているため、剥がれた血栓はそのまま血流に乗って心臓(右心房)に達します。右心房に入った血液は右心室に送られ、酸素補給のため肺動脈へと押し出されていきますが、血栓もこの流れに乗っていきます。ところが肺動脈は、次第に枝分かれして細くなっていくため、血栓は必ずどこかで止まって血流を妨げてしまうのです。

 血液がある程度流れている状態を「肺塞栓症」、完全に塞がれてしまった状態を「肺梗塞」と呼びます。肺塞栓症の段階では、息切れや目まいなどが生じることはあっても、死亡することはめったにありません。しかし肺梗塞に至ると、呼吸困難に陥り、死亡することも少なくありません。エコノミークラス症候群は、これらを一緒にした呼び名ですが、マスコミなどではかなり肺梗塞に近いイメージで使われています。

 問題は、エコノミークラス症候群の原因となる深部静脈血栓症のリスクが、血液型によって異なっていることです。数多くの研究から、「非O型(A型・B型・AB型の総称)は、O型と比べて1.5倍から3倍ほど、リスクが高い」ことが分かっています。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。