なりやすい病気は血液型でわかる

研究論文が語る「血液型と長生き」の深い関係

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 ABO血液型で、死亡率や寿命に違いが出るかを調べる研究が行われています。「エコノミークラス症候群」や「心筋梗塞」といった、死に直結する病気が血液型と関係しています。また、何種類かのがんと血液型が関係していることも明らかになっています。日本でも欧米でも、がんと循環器疾患は2大死因です。血液型と寿命に何らかの相関があるかもしれないと考えるのは、ごく自然な流れです。

 実際、この仮説を検証するための研究がすでにいくつか行われており、論文も発表されています。しかし、残念ながら今のところ結果はばらばらです。

 日本の研究者が2004年に発表した論文によると、「長寿の血液型はB型」となっています。東京都在住の百寿者(100歳以上の人)269人の血液型を調べたところ、B型の割合が日本人の平均よりも統計的に有意に高かったのでした。ところが、11年にイタリアで行われた同様の調査では、百寿者と血液型の間に、これといった関連は見つかりませんでした。

 アメリカの研究グループが11年に発表した研究では、「年齢に伴ってB型の人の割合が減少する」という結果が報告されています。つまり、年齢が高まるにつれてB型の人がより多く亡くなっているということです。さらに、15年にイランの研究グループが発表した論文によると、「非O型はO型と比べて死亡率が1.1倍高い」という結果になっています。

 血液型と寿命が関係しているかどうかは、現時点では何とも言えません。ただ、調査対象の人数などを考慮すると、「非O型の寿命が短い」という主張に、やや分がありそうにも見えます。ただ、寿命の違いはわずかですし、それが単に血栓症やがんのなりやすさによるものかどうかは、まだ何とも言えません。

 一方で、遺伝子と病気の関係を探る「ゲノムコホート」と呼ばれる大規模な疫学的研究が、世界中で始まっています。数十万人の遺伝子を調べ、さらに何年にもわたって病気や死亡などを克明に記録し続けて、統計的な解析を行うのです。もちろん、血液型と病気や寿命の関係も割り出すことができます。あと5年か10年待っていれば、もっと面白い結論が得られるかもしれません。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。