死を招く病気は秋に発症する

40代男性の1日死者数 冬は夏より10人多い

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 死亡数は、年間を通して一定というわけではありません。季節によって大きく変動します。

 最新(2014年)の死亡統計をもとに、月々の1日当たりの死亡数を計算すると、真冬(12~2月)は、全国で毎日約4000人が亡くなっています。一方、夏(6~8月)は、1日当たり3000人強にとどまっています。つまり真冬にピークがあり、真夏が底で、冬は夏と比べて1・3倍も亡くなる人が多いのです。

 昭和20年代までは、真夏にもピークがありました。食中毒や消化器系の感染症によるものです。しかし、衛生管理や抗生物質の普及などによって夏のピークは次第に消え、今ではもっとも死者が少ない季節になっています。

 死亡数の季節変動幅は、年齢によらず、ほぼ一定です。言うまでもなく若い人ほど亡くなる人数は少ないのですが、夏と冬の死亡数の比率には、大きな違いはありません。

 たとえば、現役バリバリの40代で亡くなる男性は、真冬が48人/日、真夏が38人/日ほど。冬と夏の比率は1.26倍です。50代では、真冬が105人/日、真夏が84人/日ほどで、1.25倍。さらに60代男性では、真冬315人/日、真夏250人/日で、やはり1.26倍。最後の桁を四捨五入すると、いずれも1.3倍です。

 季節はこれから秋へと移っていきますが、秋は夏と冬の中間、つまり最も死亡が少ない季節から最も多い季節へと移り変わるシーズンです。約3カ月間で、この“1.3倍の坂”を上りきるため、自分の周りで亡くなる人が急に増えてきた印象を受けます。

「秋に死亡が増えるのは、夏の暑さを乗り切るのに体力を消耗してしまったからだ」という説明をよく耳にします。

 夏は冬に比べて1割以上も基礎代謝が減るといわれています。体温維持のための発熱量が減るからです。加えて、散歩や買い物などの日常的な活動や、汗をかくスポーツも減りますから、ひと夏を越すと、基礎体力や筋力が低下してしまうのです。

 秋になってアクセルを全開にしようとしても、体が言うことを聞かず、故障や病気を発症してしまうことも十分に考えられます。朝の涼しいうちに散歩をするなど、無理のない範囲で体を鍛えておくことも大切です。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。