スマホが医療を変える

心拍数や呼吸数を記録 進化するウエアラブルデバイス

 日常の健康状態や運動量を手軽に計測して記録する人が増えています。こうなるまでは「スマートウオッチ」や「スマートバンド」といった、ウエアラブルデバイスの登場を待つ必要がありました。家電量販店の店頭に並ぶようになったのは2014年前後です。

 ウオッチは、もともとスマホのリモコンとして、またメールやメッセージの受信装置として開発されました(もちろん腕時計としても使えます)。しかし、活動量を搭載したタイプがいまの主流です。

 活動量とは、運動だけでなく生活全般で消費される総カロリーのこと。「加速度センサー」と「ジャイロセンサー」を組み合わせて体の動きを検知して計算します。もちろん誤差がありますから、あくまでも目安にすぎませんが、単純な歩数計よりは説得力があります。また「心拍数」や「呼吸数」を記録できるタイプも出てきています。

 近距離無線のBluetoothでスマホに接続し、計測した活動量のデータをリアルタイムで自動転送します。専用アプリで解析すれば、「消費カロリー」だけでなく、「活動パターン」や「休息」「睡眠時間」なども一目瞭然です。

 バンドは最初から装着型の活動量計として開発されました。もちろん時刻表示やメールなどの表示も可能ですが、ウオッチと比べて機能が限られています。その代わり、薄くてフィット感があり、睡眠時に着けていても気にならないという利点があります。しかし、最近では両者の機能やデザインが向上し、境目がなくなりつつあります。

 こうしたウオッチやバンドはPHR(Personal Health Record)のデータ入出力装置として注目を集めています。ただし、IT業界の巨人たちは、いまのところPHRを前面に出さず、あくまでも個人の健康管理ツールとしてアプリの展開を図っています。例えばAppleは「活動量」「睡眠」「呼吸」「栄養」の4つの切り口から健康管理を行えるアプリ「iPhoneヘルスケア」を提案しています。ただ、ホームページには「体重」「血圧」などの測定値や医学的な検査結果の入力などができるということが、小さく書かれています。マイクロソフトやグーグルもほとんど同じです。

 いきなり医療に切り込んでいくのは難しいので、まずは健康志向の一般ユーザーを囲い込み、徐々に展開していこうという作戦なのでしょう。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。