スマホが医療を変える

ウェアラブル機器で血液検査は可能か

(C)日刊ゲンダイ

 血液検査に対応したウエアラブル機器は、まだ存在しません。「血糖値」「中性脂肪」「コレステロール」「尿酸値」「血色素」など、会社の健診では20項目以上が測定されますが、化学反応を利用するため、検査には数日を要します。しかも、採血が必要とあって、ウエアラブルには参入しにくい領域なのです。

 とはいえ、ここでもスマホは着実に浸透しつつあります。通販健診(コンビニ健診)と呼ばれるサービスをご存じでしょうか。最近ではKDDI(au)など大手通信会社も参入してきています。検査の流れは、①ネットや電話で検査キットを申し込む②説明書に従って自宅で採血する(血液1滴分ほど)③採取した血液を送り返す――という単純なものです。検査会社で詳しい検査が行われ、1週間ほどで結果が自分のスマホに送られてきます。もちろんネット上に保存しておき、毎年の変化をチェックすることもできます。

 検査項目は普通の健診と同じですが、感染症や動脈硬化などの専用キットも出始めています。検査精度は従来の健診と遜色ないといわれ、しかも手軽にできる。そのため、個人の申し込みだけでなく、住民健診などにも使われ始めています。

 ただ通販健診は、結果が出るまでに時間がかかります。いまのところ、キットの申し込みから結果が送られてくるまで、約2週間を要するといいます。できる限り早く結果を見たい人には、まだまだ納得のいくサービスではないかもしれません。

 しかし血糖値に限れば、すでにウエアラブルが実用化されています。アメリカのアボット社が開発した「フリースタイルリブレ」という製品が、ヨーロッパなどで大人気になっています。500円玉サイズのセンサーを腕に取り付けると、皮膚表面の体液を自動的に分析して、血糖値を推計してくれるのです。結果は専用の小型モニター(いずれスマホに代わると思われます)に送信され、連続したグラフ表示なども可能です。

 日本でも医療機器として承認申請が出されています。価格は未定ですが、数万円以内といわれています。発売されれば、糖尿病患者や、血糖値が気になる予備群の人たちが、すぐに飛びつくはずです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。