明細書が語る日本の医療

前立腺がん手術が多い病院のトップは千葉県がんセンター

上位15病院中14病院はロボット手術を導入
上位15病院中14病院はロボット手術を導入(C)日刊ゲンダイ

 レセプトデータをもとに作成されるDPC公開データには、全国の病院の前立腺がん手術の件数(「開腹」「腹腔鏡」「ミニマム」の合計)が載っています。上位の病院を〈表〉にまとめました。

 トップは千葉県がんセンターで2014年度の1年間に220件の手術を行っています。次いで熊本中央病院、東京医科大学病院の順。がん医療の総本山である国立がん研究センターは意外と少なく、合計85件(中央病院57件、東病院28件)にとどまっています。また、静岡がんセンターは78件でした。トップクラスのがん専門病院といえども、必ずしもオールマイティーでないことが分かります。

 手術実績があるのは全国で483病院。ただし、50件以上行っているのは114病院で、全国の手術の約52%を担っています。しかし100件以上となると、たった17病院(同約13%)に過ぎません。

 12年度から「手術支援ロボット」による腹腔鏡手術が保険適用になりました。通常の腹腔鏡手術では、術者本人やビデオカメラの操作者の手ぶれなどにより、正確・精密な手術が難しいのですが、手術ロボットはそうした問題を解消してくれます。術者は遠隔操作で、ロボット化されたカメラや手術器具を操ります。ロボット側が手ぶれなどを自動的に感知し、補正してくれるのです。現在、使われているロボットの大半は、アメリカ製の「ダヴィンチ」。すでに世界中で3000台以上、日本でも200台以上が稼働しています。しかし、価格は一式2億~3億円と高価です。

■果たして必要か?

 前立腺がんの腹腔鏡手術の診療報酬は約77万円(開腹手術は約41万円)。病院が投資を回収するためには、腹腔鏡手術を増やす以外に道はありません。また現場の医師たちも、せっかく入ったロボットを存分に使いこなしてみたいはずです。しかし、そういう理由で腹腔鏡手術が増えるとしたら本末転倒。適正な使用を期待したいものです。

 各病院のホームページから手術支援ロボットの有無を調べたところ、上位15病院のうち14病院で、すでにダヴィンチが使われていることが分かりました。熊本中央病院だけは、手術支援ロボットのことが一切書かれていなかったので、まだ導入されていないのかもしれません。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。