明細書が語る日本の医療

大腸がん手術の病院は「結腸」「直腸」とも首都圏に集中

首都圏希望の地方患者は数カ月待たされる
首都圏希望の地方患者は数カ月待たされる(C)日刊ゲンダイ

 大腸がんの手術件数の多い病院を、DPC公開データから抽出して表にまとめました。元のデータが「結腸(盲腸・虫垂を含む)」と「直腸(肛門を含む)」に分けて集計されているため、表もそれに従いました。残念ながら、開腹手術か腹腔鏡手術かといった分類では集計されていません。それでも「結腸がんに強い病院」「直腸がんに強い病院」は分かります。なお、内視鏡による上皮内がんのポリープ切除術・粘膜切除術は、数字に含まれていません。

 他の臓器でも登場するような有名病院が名を連ねています。「がん研究会有明病院」(写真)は結腸・直腸の両方でトップに立っており、大腸がん手術のトップとしての地位を不動にしています。「国立がん研究センター中央病院・東病院」「東京都立駒込病院」「虎の門病院」「埼玉医科大学国際医療センター」「昭和大学横浜市北部病院」など、大腸がんに強い病院の多くが首都圏に集中しています。首都圏以外では、大阪、広島、静岡に手術件数の多い病院がありますが「大腸がんは首都圏」という構図を崩すまでには至ってません。

■首都圏希望の地方患者は数カ月待たされる

 2014年度における結腸がんの手術件数は全国で約6万7000件、直腸がんの手術は約3万1000件でした。結腸がん手術の実績があるのは1325病院。年間手術件数が100件を超えるのは159病院で、約2万3000件(全手術数の約34%)をこなしています。残りの1166病院で4万4000件を行っているのですが、年間30件以下の病院が553施設もあり、文字通り「ロングテール」の様相を呈しています。

 直腸がん手術は全国で約3万1000件。全国913病院で手術が行われました。しかし年間100件以上は45病院に過ぎず、手術件数は合計約6600件(約21%)にとどまっています。しかも年間30件以下が513病院。結腸がん以上にロングテール状態にあります。

 地方の大腸がん患者が、首都圏の実績のある病院で手術を受けるためには、数カ月は待たされそうです。その間にもがんは進行しますから、無理せず近所の病院で切ってもらうほうが賢明かもしれません。とはいえ、手術実績の乏しい病院では不安が募ります。地方の県では、手術を行う病院を県内の数カ所に集約するなどの対策が必要です。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。