話題を変えて、今度は都内セレブ病院のフトコロ具合をのぞいてみましょう。
全国的にもっとも名が通っているのが「聖路加国際病院(写真)」(中央区)です。故日野原重明氏が名誉院長を務めていたことや、入院が全個室であることなどから、知名度は抜群です。ちなみに聖路加の正式な読み方は「せいるか」だそうです。
聖路加国際病院の経営母体は、同じ敷地内にある学校法人・聖路加国際大学です。つまり大学の付属病院という位置づけになっているのです。といっても大学は看護学部だけ、入学定員はわずか75人という超スモール校。もともと病院付属の看護学校としてスタートしたのが、1964年に大学に格上げされ、2014年に現在の名称に変更した際に主従を入れ替えたという、複雑な経緯をたどっています。経営上のメリットがあったのでしょうか。それとも、ゆくゆくは医学部を持ちたいという野望があったのでしょうか。
聖路加は総合病院ですが、中でも人気なのが産科です。首都圏のセレブたちにとって、聖路加での出産はステータスになっています。しかし、産科に限れば「愛育病院」(港区)のほうが格が一段も二段も上。こちらは社会福祉法人恩賜財団母子愛育会が経営母体です。昭和天皇が皇太子(現天皇)の誕生を記念して下賜した資金をもとに設立されたため、「恩賜」の2文字が入っています。しかも現総裁は秋篠宮妃の紀子さま、長男の悠仁さまもここで誕生したという、並ぶものなき超セレブ病院です。
地方の人には馴染みが薄いかもしれませんが、秋葉原の少し奥まったところにそびえる「社会福祉法人 三井記念病院」(千代田区)もかなりセレブです。旧三井財閥総代の三井八郎右衛門の寄付をもとに、1909年に慈善病院として設立されました。現在も三井グループが全面的に支援しており、総合病院として財界を中心に人気を集めています。
慶応義塾大学病院(新宿区)は、大学病院の中でも別格です。徹底した情報管理がなされているため、政界や芸能界からの厚い支持を集めています。安倍首相も例の大腸の病気をここで治療したそうです。
今回はこの4つのセレブ病院の経営状況を見ていくことにします。
永田宏
長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授
筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。