決算書でわかる有名病院のフトコロ事情

愛育病院の出産費用 無痛分娩で個室なら最大138万円

個室も選択肢の1つ(写真はイメージ)
個室も選択肢の1つ(写真はイメージ)(C)日刊ゲンダイ

 健康な出産は、健康保険や国民健康保険の対象ではありません。そのため病院で出産すると自由診療扱いになり、費用を全額負担することになっています。とはいいながら、出産後に健保組合等に申請すると「出産育児一時金」として、子供1人当たり42万円が支給されます。またほとんどの病院や産科クリニックが、出産費用(1週間程度の入院と食事代等を含む)を40万円前後に設定しています。つまり、出産にかかる個人負担は事実上ゼロということです。

 しかしそこは、セレブ病院。愛育病院の料金は一般とは一味違っています。<表>は病院ホームページに公開されている料金をまとめたもの。基本料金(一般室に5~7日間入院)が69万円ですから、普通の病院よりも30万円近く高い設定です。ただ、庶民では払えないほど高額ではありません。それに健康保険から42万円が出ますから、実質的には27万円の負担で済みます。そのくらいの出費で最高ランクのセレブ病院で出産できるとしたら「安い!」と思う人もいるでしょう。

 ただ、無痛分娩を選択すると、さらに20万円が上乗せされます。セレブともなれば、無痛分娩が当たり前かもしれません。ベッド数は160床ですが、そのうち34室が個室になっています。個室料金はもっとも安い部屋で1日2万円、最高の部屋なら1日7万円。個室に7日間入院し、無痛分娩で出産したとすると、最大で合計138万円ナリ。さすがに庶民には手が出しにくい金額です。

 愛育、聖路加と並んで「ご三家」と呼ばれる山王病院(港区)は、同病院内に山王バースセンター(19床)を開設しています。2015年に新築されたとあって、高級ホテル並みの内装を誇り、セレブ感が一層増したといわれています。山王の出産費用は公表されていませんが、やはり100万円を軽く超えるとか。しかも全室個室になっています。一般病室がありませんから、よりセレブ感に浸れるのではないでしょうか。

 愛育で出産した有名人は、なんといっても秋篠宮妃の紀子さま。ほかに三田寛子さんや水野真紀さんの名前が挙がっています。対する山王病院は神田うのさんや倖田來未さんなど。客層がはっきりと分かれているようです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。