総収入に対する教職員の人件費率と、付属病院の医療経費率(医薬品・消耗品・外部委託費・給食費など)にも各校の特徴が表れています<表>。
付属病院のベッド数が少なく、学生納付金の比率が高い愛知医大と金沢医大は、人件費率・医療経費率ともに高めです。愛知医大は医療経費が全収入の50%を超えています。
金沢医大も40%を超える高水準です。関東の医科大学と比べて10ポイントほど高い数字ですが、決算書からは、詳細までは分かりません。
大阪医科薬科大は、合併による特別利益が大きかったため、本業である教育活動支出に占める数字を計算しました。医学部と薬学部で構成されるので、教員数が多く、それが高い人件費率に反映されていると思われます。医療経費率は低い数字になっていますが、対医療収入で見ると32・4%となり、大学病院としては標準的な水準にあることが分かります。
付属病院のベッド数が多く、学生納付金が少ない関西医大は、東京慈恵会医大や独協医大など、関東の医科大学と同水準の人件費率・医療経費率を示しています。付属病院を主体とする大学経営を行うと、だいたいこの水準に落ち着くということなのかもしれません。
兵庫医大は人件費率が愛知医大と同水準、医療経費率が金沢医大とほぼ同等。ベッド数もほとんど同じ(金沢医大1044床、兵庫医大1055床)です。こちらも医科大学の経営の、ひとつの典型例になっているのかもしれません。
川崎医大は単独の決算書が公表されていないため、学校法人川崎学園の数字で代用しています。残念ながら医療経費は独立した項目として掲載されていませんでした。
関東も含めて、医科大学には次の3パターンがあることが分かりました。①収入のほとんどを付属病院で稼ぐタイプ(関東の主な医科大学)②医学部の比重が高いタイプ(愛知医大・金沢医大など)③合併や複数大学の展開などにより、医療の総合大学を目指すタイプ(大阪医科薬科大・川崎医大など)。
患者がそうした違いを感じることは、ほとんどないでしょう。しかし、お子さまの医学部受験をお考えの方には、大きな違いになるかもしれません。
永田宏
長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授
筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。