桂歌丸さんも苦しんだ…余命十数年でも気づかないCOPDとは

元気な頃の桂歌丸さん。一時は体重が35キロ台まで落ちた
元気な頃の桂歌丸さん。一時は体重が35キロ台まで落ちた(C)日刊ゲンダイ

 落語家・桂歌丸さんの病気。それが、COPD(慢性閉塞性肺疾患)だ。歌丸さんは今年7月、COPDにより81歳で亡くなった。酸素チューブを鼻に装着し高座に上がっていた姿を覚えている人もいるだろう。

 このCOPD、名前は知っていても病気の内容になるとピンと来ない人が多い。「いきいきクリニック」の武知由佳子院長によれば、COPDは、たばこの煙を主とする有害物質に長期にさらされることなどで生じる肺疾患。覚えておきたいのは、治療を受けなければ呼吸不全から死亡に至ること。そして、治療が遅れるほど“手遅れ”になり、余命が短くなる。ところが、COPDは相当進行しないと、動いた時の息切れ、慢性的な咳や痰を自覚しないので、気付きづらい。

「1日20本26年間たばこを吸い続けているあるタレントさんは、実際は46歳ですが、1秒間に吐き出せる呼気量による肺年齢はすでに74歳。余命13年という計算でした」(武知院長)

 このタレントさんは、自分の肺年齢が死に近づいているとは、夢にも思っていなかった。

「日本ではCOPDで治療を受けている人は10%ほどで、90%は潜在患者。COPDがある人の方が高血圧や虚血性心疾患、糖尿病などさまざまな疾患を起こしやすく、死亡率も上がります」(武知院長)

 COPDの治療は、症状に応じた薬物療法や運動療法などの呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)になるが、「COPDに詳しい医療スタッフが患者さんと伴走して行う呼吸リハが重要」と武知院長は強調する。

「診断率が低いからこそ適切なケアにたどり着かず、訳の分からない息苦しさに襲われると呼吸が乱れ、自分の呼吸で動的肺過膨張(“息を吸うが、吐き出しきれずに残る”を繰り返す)を起こして呼吸困難感が増し、そのたびに救急車で病院に運ばれることになる」(武知院長)

 つまり、悪循環だ。70代男性は、以前は年に3回以上入院していたが、武知院長の在宅チームの伴走後は、4年5カ月のうち、入院は肺炎による1回だけだった。

 喫煙者であれば、まずは自分の肺の状態を知る。もしCOPDと診断されれば、将来動けなくなった時を見越して、最適な伴走者探しを。“手遅れ”になる前に。

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