患者が語る 糖尿病と一生付き合う法

低血糖で昏倒…しかし血糖測定器で“200超”表示の理由は

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 主治医とケンカしてまでインスリンの量を減らさず、高血糖になっている時間を少しでも短くしようとしてきた僕だが、ある時期、少々ムキになってインスリンを打ちすぎていたことは否めない。その結果、昏倒して深夜に救急搬送されるような目にも遭っているのだ。

 しかもそのとき、当直医が経験の浅い若いインターンみたいな先生だったばかりに、僕は危うく死の瀬戸際まで行かされている。

 過去の経験から、僕の意識喪失が低血糖によるものだと確信していた妻は、救急隊員にもそう伝えていた。ところが当直医は測定器で血糖値を測ってみたら200㎎/デシリットルを超えるむしろ高い値だったから、昏倒は低血糖以外の原因だと指摘してきたという。脳の疾患なども考えられるということで、僕は意識がないままCTスキャンにまでかけられていたらしい。しかし妻は、納得できずにいた。もしも低血糖なら、可及的速やかにブドウ糖を投与する必要がある。その間にほかの検査などをしていたら、手遅れになる可能性もあるではないか。

「もう一度血糖値を測り直してみてもらえませんか」と妻が食い下がると、どのみち採血もして検査に回しているので、その結果を見ればいいと悠長な答えを返してきたそうだ。

■危うく死の瀬戸際まで

 血液検査の結果では、僕はまごうかたなき低血糖と判明。おかげでブドウ糖を投与されることになり命も失わずに済んだのだが、一体どうしてそんなことが起きたのか。

 血糖測定器の多くは電源が入ると、まず直前回の測定結果が表示される仕様になっている。ここから先はあくまで想像だが、測定器の使い方に慣れていなかった当直医は、僕の血を吸い取らせたつもりで実は失敗しており、前回の(ほかのだれか無関係な人の)結果を、僕の血糖値だと思い込んでいたのではないか。先輩の医師たちがいいように押しつけているのかもしれないが、そんな当てにならない先生を救急の当直につかせるのはいかがなものだろう。

平山瑞穂

平山瑞穂

1968年、東京生まれ。立教大学社会学部卒業。2004年「ラス・マンチャス通信」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。糖尿病体験に基づく小説では「シュガーな俺」(06年)がある。

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