「はしか」はアメリカでは2000年までに排除が宣言され、2000年代の初めには患者は年間数十人程度でした。
ところが近年再び増加傾向にあり、今年は各地で大流行。10月までに、はしかと確認された患者の数は1250人に上っています。
そんな中、はしかがこれまで考えられていたよりずっと免疫系への影響が大きく危険な病気だという研究結果が発表され、驚きを与えています。
米誌「サイエンス」に掲載された研究はハーバード大学医学部の研究者が中心に行ったものです。
研究のベースになったのは、オランダのキリスト教プロテスタント正統主義の学校に通い、宗教的な理由で予防接種を受けなかった77人の子供たち。彼らの血液を採取し、免疫系を調べたところ、はしかにかかった子供は治癒してからも数年間、免疫が弱まり、インフルエンザや肺炎などの病気にかかりやすくなったといいます。感染症と戦うアンチボディーをつくる細胞を、はしかウイルスが破壊するためです。
子供が風邪をひいたり、お腹に菌が入って痛くなったりするのは珍しくありませんが、免疫系はそれを記憶して、次に菌が入ってきた時に攻撃する働きをします。
ところが、はしかウイルスはこの記憶を消去してしまい、また最初からやり直しとなる……。研究者らはこの現象を「免疫の記憶喪失」と名付けました。
アメリカでは以前もお伝えしたように、宗教的な理由などで予防接種を拒否する人がじわじわと増えていて「アンチバクサー」と呼ばれています。そのため、予防接種を受けない子供から学校などではしかが流行し、社会問題になっています。
研究者は「せっかくほかの病気の予防接種を受けていても、一度はしかをうつされてしまえば、ワクチンによる免疫はすべて消えてしまう」とコメント。そんなはしかの恐ろしさを少しでも広く知ってもらい、ひとりでも多くの人が予防接種を受けてほしいと呼びかけています。
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