中高年の正しい眠り方

睡眠は夏は冬より短い 必要な時間は季節によって変動する

起床から4時間後に眠気がないか
起床から4時間後に眠気がないか(C)日刊ゲンダイ

 もっと眠れるのにもったいない……夏になると朝早く目覚めてしまって、こんな不満を抱く中高年が少なくありません。そんな人の多くは「睡眠は8時間が理想的」「6時間は眠らないとダメだ」といった思い込みに縛られています。

 そもそも、必要な睡眠時間の長さは個人によって異なります。近年、睡眠のタイプはその半分が遺伝子で決まると考えられていて、遺伝子の違いによって必要な睡眠時間が短めの人と長めの人がいます。

 また、残りの半分は生活習慣で決まります。たとえば、長年にわたって短時間睡眠を求められる職業に就いてきた人は、退職後も長く眠れなくなります。つまり、必要な睡眠時間は人それぞれで、遺伝子や勤務形態の違う人と比べても意味がないのです。

 以前もお話ししましたが、睡眠時間は年齢によっても変わってきます。10代の頃は「いくら眠ってもまだ眠い」というくらい長く眠れますが、50代後半になるとそれほど長く眠らなくなります。年齢を重ねるほど日中のエネルギー消費量が低下するため、必要な睡眠時間が短くなるのです。

 さらに、季節によっても必要な睡眠時間は変化します。日照時間が長い夏は睡眠時間が短くなり、日照時間が短い冬は長く眠るようになります。夏至と冬至では、睡眠時間に2時間程度の差があるのが自然です。夏の睡眠時間は、冬よりも2時間短くなるということです。

 このように睡眠は個人の遺伝や環境、年齢や季節によって変化します。それなのに「8時間睡眠が良い」と思い込み、一年を通して同じ睡眠時間を目指そうとするのは不自然で、結果的に睡眠リズムを崩してしまう人がたくさんいます。

■起床から4時間後にチェック

 夏に朝早く目覚めたら、それで必要な睡眠は十分にとれているということで、そのまま起きてしまった方が体の調子は良いといえます。しかし、「長く眠った方が体は休まる」という先入観によって再び寝ようとすると、睡眠時間が足りているから眠れません。結果、焦って睡眠リズムを崩し、不調を招いてしまうのです。

 それでは、結局、自分は何時間眠るのがベストなのか。それについては、すべての人に当てはまる臨床的な基準があります。「起床から4時間後に眠気があるかどうか」です。われわれには「睡眠―覚醒」の生体リズムが備わっていて、起床から4時間後に脳が最も活発になるようにプログラムされています。この時間に眠気があったら睡眠の絶対量が足りていないと判断できるのです。

 たとえば、夜11時に寝て朝7時に起きている人が、午前11時のタイミングであくび、だるさ、ボーッとするなど眠気に関する兆候が見られたら、たとえ8時間寝ていても、睡眠が足りていないということになります。

 単純な睡眠時間を目安にすると、不満や焦りにつながります。起床4時間後に注目すれば睡眠の変化にも対応できるので、自分に合った睡眠時間を常にチェックしてみましょう。

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