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眠れぬほどひどい帯状疱疹後神経痛…注射治療により3カ月で回復

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写真はイメージ(C)PIXTA

 不動産会社を経営している70代の男性Cさんが、私の元に「顔から首、肩の痛みを何とかしてほしい」と相談に来られました。夜も眠れないほどの痛みが数日間続いているというのです。

 顔面の神経に発生した帯状疱疹で、疼痛(とうつう)の場所は右肩から首、さらに顔の右側と広い範囲にわたり、顔や頭皮には赤い湿疹も現れていました。

 帯状疱疹とは、子供の時にかかった水ぼうそうの原因ウイルスによって起こる病気です。水ぼうそうが治った後もウイルスが脊髄に残り、本人の免疫が落ちた時に神経に沿って神経症状が出現します。発症したらできるだけ早い処置が必要なのですが、経営者で仕事が忙しかったCさんはすぐに病院に行くことができず、かなり痛みがひどくなってから私のクリニックを受診したのでした。

 帯状疱疹の痛みには特徴があります。神経を刺激するため、ピリピリとかチクチクとかズキンズキンとした激しい痛みで、何かに軽く触れるだけでも痛みを感じます。ひどい人は風が吹いても痛みが出るほどです。

 こうなると、夜も眠れないというのもよくわかります。

 また、帯状疱疹の厄介なところは、処置が遅れると、帯状疱疹後神経痛という後遺症が出ることです。まさにCさんが、そうでした。帯状疱疹そのものは治っているのですが、神経がウイルスに傷つけられ、痛みが長期間にわたって続きます。

 痛み止めの飲み薬ではなかなか改善しないケースも少なくありません。

 私はCさんの首、肩周辺の痛みに対処するため、星状神経節ブロック注射の処置を提案しました。交感神経節に麻酔薬を注射し、交感神経の過緊張を一時的にブロックする治療法です。

 症状によって保険が適用される場合とそうでない場合がありますが、帯状疱疹の疼痛には、回数の限度はありますが適用されます。

 Cさんは「とにかく痛みを止めたいから、可能なら毎日でもお願いしたい」と、最初の頃は1日おきに来院。途中で保険適用の回数の限度を超えてしまったものの、「自費治療でも構わないから痛みをとってほしい」と、それからも2~3日に1度の頻度で来院し、徐々に症状が改善していきました。

 来院時は「痛みのスケール」のVAS値が最高値の「10」だったのですが、3カ月後には「3」まで改善し、治療もその時点でいったん終了となりました。治療が年単位で続くこともある帯状疱疹後神経痛が、Cさんの場合、発症後約3カ月で、趣味のゴルフでコースを回れるところまで回復したのです。

西本真司

西本真司

医師になって34年。手術室麻酔、日赤での緊急麻酔、集中治療室、疼痛外来経験後、1996年6月から麻酔科、内科のクリニックの院長に。これまでに約5万8000回のブロックを安全に施術。自身も潰瘍性大腸炎の激痛を治療で和らげた経験があり、痛み治療の重要性を実感している。

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