最近、口が乾いてものが食べにくいし、話しづらい……。年を重ねるにつれて気になる口の乾燥。ドライマウスはさまざまな原因によって引き起こされますが、シニアの場合は唾液を作る唾液腺の機能が低下し、分泌量が減ることが大きな原因です。また、噛む力の衰え、使っている薬の副作用、行動範囲が狭くなることで話す機会が減ることも、唾液が出にくくなる要因とされています。
口の乾燥は乾いたものが食べづらい、舌が傷んだりざらつく、口の中がネバネバする、入れ歯で口の中が傷つきやすいといった不快感を生じます。また、歯周病や口臭の原因になり、味覚障害を引き起こすケースもあります。
たかが口のトラブルと思っていても、全身のトラブルにつながりかねません。風邪や感染症にもかかりやすくなり、食べものが飲み込みづらいために誤嚥(ごえん)性肺炎の原因になることもあるのです。
中医学において、口の乾燥は老化をつかさどる臓器である「腎」の衰えと、体内の水分不足と考えます。
腎の働きが低下すると、唾液の量が減ってしまいます。さらに体に潤いを与える体液である「水」が不足しているため、全身が乾燥しがち。ひいては口の中も乾いてしまうのです。
改善のためには、腎の機能を高めて、潤いをチャージする食材を取り入れることが大切です。
おすすめはすっぽん。精力増強のイメージが強い食材ですが、そればかりではありません。腎を強化する作用に優れ、老化トラブル全般に威力を発揮する「スーパーお達者食材」。滋養強壮、肉体疲労時、病後の体力向上にもバツグンの効果があります。全身にたっぷり潤いを与える作用も高く、口の乾燥も改善する働きがあります。
また、女性にとってはシワや乾燥肌の改善におすすめ。楊貴妃も欠かさず美肌のために食べていたという美容食材でもあるのです。続けると肌のしっとり感が変わります。そのほか更年期障害、のぼせ、ほてり、慢性下痢、不正出血の改善にも役立ちます。
すっぽんは、あまりなじみがない人もいるかもしれませんが、まるで「肉と魚のいいとこどり」をしたような味わいでとても美味。鍋などでお取り寄せ可能ですが、スーパーでも手軽に使えるスープ缶が販売されています。ぜひ、シニアは健康維持のために、コンスタントに取り入れることをおすすめします。
すっぽんの口の乾燥を改善する効果を高めるには、同様の効能があるナガイモ、豆腐などと組み合わせるといいでしょう。
■すっぽん高齢薬膳レシピ
すっぽんの潤いスープ
腎の働きを高め、体に潤いを与えるすっぽん、ナガイモと、水分チャージによい豆腐を組み合わせたレシピです。市販のスープ缶を使えばカンタンに完成。女性には「シワ改善」にうれしい美肌レシピです。
【材料】2人分
●すっぽんスープ 2カップ
●ナガイモ 5センチ
●豆腐 4分の1丁
【作り方】
鍋にすっぽんスープを入れて熱し、皮をむいて薄切りにしたナガイモ、食べやすく切った豆腐を入れて温める。
新著「中年女子のゆる薬膳。」(文化出版局)が好評発売中。
健康長寿に役立つ高齢薬膳