健康長寿に役立つ高齢薬膳

【カニ】血の滞りを解消し痛みや腫れを軽減する「食べるシップ」

カニタマ(提供写真)
カニタマ(提供写真)

 年を重ねると増えるのが「打撲」によるトラブル。シニアは足腰の弱りから、どうしても転びやすくなったり、姿勢を変えるときにバランスを崩して倒れたりしやすくなります。

 打撲とは、皮下組織が損傷した状態をいいます。痛みや熱感、腫れ、内出血といった症状がみられ、軽度の場合、通常は数週間で治まります。ただし、シニアの場合は長引きがち。老化による血行不良から痛みが慢性化することもあります。そして、内出血が強くみられるときには、周囲の神経や血管が圧迫されて、手足のまひ、血流障害を生じることもあるので注意が必要です。

 また、関節部を打撲した場合、しこり状の「瘢痕組織」ができてしまうと、関節機能をつかさどる組織の運動が妨げられて「関節拘縮」を来す可能性もあります。関節が固まった状態が長期間続き、完全に治らないケースもあるのです。

 シニアにとって、打撲は一気に足腰が弱る原因になりかねません。早めに医療機関で適切な治療を受けることが大切ですが、食事によって体の中からもケアして回復を図りましょう。

 中医学において、打撲は「血」が滞った状態と考えます。血行を促進して、痛みを軽減する食材を取り入れることが改善のポイントです。

 おすすめはカニ。血の滞りを解消して血液を浄化する働きに優れた魚介で、打撲による痛みや腫れを軽減する効果があります。骨折の改善にもおすすめです。また、肩こりにも威力を発揮。中国では「土の中で動くカニは、肩の中でも動いて肩こりをほぐす」とされ、肩こり解消の薬膳によく使われます。まさに「食べるシップ」として取り入れたい食材なのです。

 そのほか肝機能の浄化、喉の腫れ、水分代謝をアップしてむくみを改善する効能なども備えています。

 これからのシーズン、カニがおいしくなる季節ではありますが、そんなに予算が……という心配はご無用。「カニ缶」を使えば手軽に取り入れることができます。カニ缶はうまみが強いので少量でもおいしい一品が完成。カップみそ汁や、スープに汁ごとプラスすれば、ワンランク上の味わいになります。

 ただ、カニは体を冷やす傾向があるので、ショウガやニンニク、ネギなどを組み合わせるといいでしょう。また、カニの打撲によるトラブル改善のためには、同様に血行を促進する効能があるタマネギ、ピーマン、ニラ、黒キクラゲなどを組み合わせるのがおすすめです。

■カニ高齢薬膳レシピ

カニタマ

 打撲によるトラブル改善によいカニと、同じく血流アップに優れた働きがあるタマネギを組み合わせたレシピ。卵ではなく、タマネギの「カニタマ」です。カニ缶を使ってレンジで簡単調理。カニの上品なうまみがタマネギにしみておいしくいただけます。ごはんにのせて丼にしたり、うどんにのせるのもおすすめ。

【材料】2人分
●カニ缶(小)  1缶
●タマネギ  1個
●ショウガ(すりおろし)  少々
●A(酒・水=各大さじ1、鶏がらスープのもと=小さじ2分の1)
●ごま油  少々
●塩、こしょう  適量

【作り方】 耐熱皿に薄切りにしたタマネギ、カニ缶を汁ごと入れ、ショウガとAも加え全体を軽く混ぜる。ラップをかけて5分ほど加熱したら、ごま油をかけ、塩、こしょうで調味する。

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池田陽子

池田陽子

薬膳アテンダント・食文化ジャーナリスト・全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。国立北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)で国際中医薬膳師資格を取得。近著「1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日」が好評発売中。

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