健康長寿に役立つ高齢薬膳

【羊肉】「陽」の食材でエネルギー源の気を補い滋養強壮に優れる

ラムのやる気炒め(提供写真)
ラムのやる気炒め(提供写真)

 なんだか、最近やる気が出ない。何をするにもおっくうで、外に出るのも面倒くさい……。

 年齢を重ねるにつれて、体だけではなく精神機能も低下します。若い頃のように気力を維持することは難しくなってくるのです。シニアは定年退職や身体的機能の低下から外出が減り、人づきあいが少なくなりがちです。刺激が減ることによって精神機能はますます低下。モチベーションが下がった状態が続くと、うつを引き起こすリスクもあります。

 さまざまなことに意欲を持ち、アクティブに活動することは、シニアの健康にとって大変重要です。生涯現役を目指すなら、「やる気」が要。食生活を見直して、「やる気スイッチ」をオンにしましょう。

 やる気をアップする食養生のポイントになるのが「陽」の食材です。中医学では「陰陽学説」といって、この世にあるすべてのものは陰と陽に分かれるという考え方があります。食材も同様。陰と陽、どちらでもない中庸に分かれています。

 食事は陰と陽のバランスがとれていることが基本。陽の食材は体を温め、陰の食材は冷やして潤いを与えます。陽の食材が不足すると、なんだか気力が湧かない、動きたくない、疲れやすい、冷えるといった傾向が表れます。一方、陰の食材が足りないと、怒りっぽい、落ち着きがない、のぼせるといった症状が見られがちです。やる気を出すためには、陽の食材を取り入れることが必要なのです。

 おすすめは羊肉。陽に属する羊肉は、人間のエネルギー源である気を補い、滋養強壮に優れています。さらに、血を補う作用もあり、めまい、立ちくらみなどの改善にもおすすめ。そして、老化をつかさどる臓器「腎」の働きも高め、加齢によるトラブル全般に役立ちます。

 そして、寒さが厳しくなるこれからの季節にぜひ積極的に取り入れてもらいたい食材です。羊肉は肉の中でもっとも体を温める効能が高く、その食性は「熱性」。食べるストーブ級のヒートアップ効果があるのです。

 最近はラムを販売しているスーパーも増えました。「ジンギスカン」や「ラムチョップ」くらいしか食べ方が思いつかないかもしれませんが、「ちょっとクセのある牛肉」くらいのイメージで調理すれば、いろいろな料理に応用できます。ポイントはニラやパクチーなどクセのある食材と組み合わせたり、スパイスを効かせること。カレー粉を振って炒めるのもおすすめです。

 陽の食材は、ほかにニラ、ネギ、ショウガ、エビ、赤貝、黒砂糖、シナモンなどがあります。羊肉と組み合わせて、やる気モードを全開にしましょう。一方、陰の食材は、豚肉、トマト、キュウリ、ダイコン、豆腐、バナナ、緑茶などがあげられます。気力アップのためには取りすぎないように気をつけてください。

 ちなみに、中庸の食材には、イモ類、豆類、きのこ類、キャベツ、米が該当します。食事のバランスを取るために活用しましょう。

■羊肉高齢薬膳レシピ

ラムのやる気炒め

 ラムに、同じく陽の食材であるネギ、ニラ、ショウガ、山椒を組み合わせた、まさに「やる気みなぎる」レシピ。オイスターソースやサンショウの風味でラムのクセがなく、やみつきになるおいしさです。

【材料】2人分
●ラム薄切り肉  150グラム
●ネギ    2分の1本
●ニラ  2分の1束
●ショウガ  1かけ
●ニンニク  1かけ
●A(しょうゆ・オイスターソース・酒=大さじ2分の1)
●サンショウ、塩、コショウ、サラダ油  適量

【作り方】フライパンに油を熱し、みじん切りにしたショウガ、ニンニクを炒め、香りが出たら塩・コショウをしたラム肉、斜め薄切りにしたネギを入れて炒める。火が通ったらAを加えて全体を混ぜ、ザク切りにしたニラも入れて炒め合わせ、塩・コショウで味を調えてサンショウを振る。

新著「中年女子のゆる薬膳。」(文化出版局)が好評発売中。

池田陽子

池田陽子

薬膳アテンダント・食文化ジャーナリスト・全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。国立北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)で国際中医薬膳師資格を取得。近著「1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日」が好評発売中。

関連記事