健康指標の意味を知る

【AST・ALT】100を超えると慢性肝炎や脂肪肝の可能性がある

AST・ALTとも100を超えると慢性肝炎や脂肪肝の可能性
AST・ALTとも100を超えると慢性肝炎や脂肪肝の可能性

 健診での肝機能検査の代表は「AST」「ALT」「γ-GTP」の3項目です。今回はASTとALTについて解説します。

 ASTは以前はGOT、ALTはGPTと呼ばれていましたが、国際的な名称変更が行われ、今のようになりました。しかし、変わったのは名称だけですから、以前の数字をそのまま参考にすることができます。

 この2つは肝細胞に多く含まれる酵素で、肝臓が障害を受けると、血中に大量に溶け出してきます。そこで逆に、血液中の濃度を測定すれば、肝臓の状態が推定できるというわけです。両者の違いは、肝臓に限局しているかどうかです。ALTは肝臓にしか存在しないため、もし血中濃度が上昇してきたら、ほぼ確実に肝臓に問題があることが分かります。一方、ASTは心筋や赤血球中にも存在するため、肝臓以外の病気でも上昇することがあります。

 日本人間ドック学会の基準値は、AST、ALTとも正常範囲が30IU(国際単位)以下で、51以上になると「異常」と判定されます。しかし両方とも100以下なら、医者はあまりうるさいことは言いません。大抵は経過観察や食事・飲酒指導などで済むはずです。

 しかし、100を超えてくると、慢性肝炎や脂肪肝などの可能性が出てきます。その場合、ALTがASTより高ければ、アルコール性肝炎かもしれません。また両方とも500を超えると、急性肝炎の可能性が出てきます。ただし、健診の結果が届くより先に具合が悪くなって、病院に行くことになりそうです。

 ASTのみが高いと、心臓が悪い可能性が出てきます。心不全や心筋梗塞で心筋が壊れると、ASTが血中に出てくるからです。実際、ASTは心臓病の診断指標のひとつになっています。もちろん本当に心筋梗塞だったら、悠長に健診を受けるどころではありません。しかし、心不全の初期など自覚症状がほとんど出ていない段階なら、ASTがきっかけで見つかることもあり得るのです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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