健康格差は年収格差

足立区vs港区 「所得が多い方が長生きする」は本当か

お金の浮き沈みが激しいのは港区民
お金の浮き沈みが激しいのは港区民(C)日刊ゲンダイ

 東京・足立区と港区の平均年収には、2013年の調査において、約600万円もの差がありました。しかしそれだけでは、格差が拡大しているかどうかは分かりません。そこで総務省の統計をもとに、過去30年間(1984~2013年)の平均年収をグラフにしてみました。

 港区に金持ちが多いことは昔から知られていました。すでに84年時点で、足立区とは2倍の年収格差があったことが分かります。しかしその差はバブル期に一気に広がり、絶頂期の91年には、格差は現在よりも大きい594万円(港区962万円、足立区368万円)に達していたのです。

 バブル崩壊とともに、港区の平均年収は一気にしぼんでしまいましたが、2000年ごろから再び反転し始めます。ITバブルの到来です。この年はブロードバンド元年と呼ばれ、これを境に日本は本格的なインターネット時代に突入していきます。ITベンチャーが続々と起業し、勝ち組たちは続々と港区や渋谷区に本社を移しました。六本木ヒルズ(03年開業)が着工したのもこの年で、後に「ヒルズ族」という言葉を生み出しましたが、その多くがIT長者たちでした。

 港区の平均所得も急上昇し、前回のバブル期の数字を軽やかに超えていきます。06年に1000万円超の大台に乗せ(1007万円)、08年には1123万円を記録しました。

■平均年収の差はむしろ縮小

 一方、足立区の平均年収も80年代から90年代初期にかけて、バブルの影響で上昇したものの、港区ほどの勢いはありません。しかしバブル崩壊の影響をほとんど受けることなく、370万円前後で推移し、21世紀を迎えているのです。その後はITバブルの恩恵に浴することもなく、徐々に減収。格差が最大だったのは08年で、785万円に達していました。

 しかし同年のリーマン・ショックを受け、港区の平均年収は900万円台前半まで落ち込み、低迷しています。足立区の平均年収も緩やかに下がり続けていますが、両者の差はむしろ縮小しているのです。

 平均年収は景気に連動していますが、とりわけ港区は、景気の影響を受けやすいことが分かります。収入においては港区民は、足立区民よりも波瀾万丈の人生を歩んでいるのです。

 本当に港区民のほうが健康で長生きなのかと疑問が湧いてくるではありませんか。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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