O型血液は特別なのか?

<4>動脈系の血栓症でも非O型より若干有利

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 多数の疫学研究から、心筋梗塞に関してはO型が他の血液型よりもやや有利、脳梗塞でもO型がやや有利という結果が出ています。しかし、肺塞栓症など静脈系の血栓ほどクリアな違いは見られません。

 静脈系の血栓は、主に「血液の流れが滞る」ことと、「血液の固まりやすさ」によってできやすさが決まります。一方、心筋梗塞や脳梗塞の原因となる血栓は動脈内で作られるため、機構がより複雑になっています。

 心筋梗塞は、冠動脈(心臓自身に血液を送る動脈)が詰まる病気。また脳梗塞は、脳動脈や頚動脈でできた血栓が脳内で詰まることによって起こります。

 動脈は加齢とともに弾力性を失っていきます(動脈硬化)。とくに高脂血症の人の動脈は、内壁にコレステロールがこびりつき、さらに脂肪が蓄積して瘤を作るため、次第に狭くなっていきます。そして何かのきっかけで脂肪の瘤が剥がれると、それを核にして一気に血栓ができてしまうことがあるのです。とりわけ高血圧の人は要注意です。血圧が高く、血管の弾力性が悪いほど、瘤が剥がれやすいからです。

 動脈系の血栓は、動脈硬化、高脂血症、高血圧などの影響が大きいため、必ずしも血液自体の固まりやすさだけでは決まりません。しかしそれでも、O型のほうが非O型よりも若干有利になっているのです。

 前回紹介した、デンマークとスウェーデンにおける100万人以上の献血者を25年間にわたって追跡調査した研究によれば、心筋梗塞の発症リスクは、非O型がO型の1・10倍、脳梗塞では1・07倍となっています。この数字だけ見ると、さほど差はないと言えそうです。しかし論文には「その他の動脈血栓症(動脈閉塞症)のリスクは1・55倍」とも書かれています。

「その他」はイメージしにくいかもしれませんが、動脈系の血栓は、別に脳と心臓の専売特許ではありません。動脈硬化は全身性ですし、当然コレステロールも脂肪も、どこの動脈の内壁にもこびりつくため、あちこちで詰まってしまうのです。

 足の動脈が詰まれば「下肢動脈閉塞症」、腎臓で生じれば「腎動脈閉塞症」といった具合です。これらのリスクが、非O型でかなり高めになっているのです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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