健康長寿に役立つ高齢薬膳

【クコの実】肝と腎をパワーアップする働きで「食べる目薬」と呼ばれる

アサリとホウレンソウのクコの実ドレッシングサラダ
アサリとホウレンソウのクコの実ドレッシングサラダ(提供写真)

 シニアに多い体の悩みのひとつが目のトラブルです。40歳を過ぎると目の調節機能が低下してものが見えづらい、目が疲れやすい、目がかすむといった症状が出始めます。さらに目の機能は年々衰えて、白内障、緑内障、加齢黄斑変性といった失明につながるような視覚障害を引き起こす病気のリスクが高まります。重篤な症状に至らなくても、目の不調は頭痛や肩こりなどのトラブルを引き起こしがちです。食養生で老化に負けない「目力」をつけましょう。目は、中医学で「肝」と呼ばれる臓器と関係が深く、肝の機能が低下すると、目の不調につながりやすいとされています。改善のためには、肝の働きをアップして目にしっかりと栄養を送り届ける食材を取り入れることが大切です。

 また、老化をつかさどる臓器「腎」の働きが悪い場合も、視力低下を引き起こしやすくなります。腎を強化する食材も併せて取り入れるとさらに効果的です。

 おすすめはクコの実。「これさえ入っていれば薬膳」のイメージが強い食材ですが、じつにそのパワーは絶大です。クコはナス科の落葉性低木で、中国では昔から滋養強壮、不老長寿の妙薬として重宝されてきました。実ばかりか、葉、根の部分も生薬として使われています。

 とりわけ注目すべきは眼病予防と改善効果です。クコの実は肝と腎の働きを高め、目を丈夫にする優れた効能があるのです。中国では「食べる目薬」ともいわれ、薬膳では加齢による目のトラブル、視力低下、疲れ目、ドライアイ、目の充血などに必ず使われます。

 そのほか老化防止、腰や膝の痛みの改善、めまいにも効果があります。また、全身を滋養する栄養成分である血を増やす働きも高いため、増毛、美肌にもうれしい食材です。1日大さじ1~2程度、コンスタントに取り入れるとよいでしょう。

 クコの実はそのままおやつとして食べるだけではなく、味にクセがないので料理に使うのもよし。ほんのりした自然な甘味が加わるので、煮物に“砂糖・みりん代わり”のイメージで使ったり、スープやカレーに入れるとおいしくいただけます。また、水や日本酒に漬けて戻したものを炒めものに加えたり、サラダなど料理のトッピングに使うと彩りもよく、手軽に薬膳メニュー化を図れます。

 また、お湯1カップにクコの実大さじ1を入れて、数分蒸した「クコ茶」もおすすめです。

 クコの実の目のトラブル改善効果を高めるには、アサリ、カキ、イカ、ホウレンソウ、小松菜、ニンジンと組み合わせるといいでしょう。

 ちなみに、中医学において春は肝の働きが過剰になりバランスが崩れることで、その機能が衰えやすい季節。つまり、春はもっとも目のトラブルを引き起こしやすいのです。この季節はとくに目を守る食養生を心掛けましょう。

■クコの実高齢薬膳レシピ


アサリとホウレンソウのクコの実ドレッシングサラダ

 目のトラブル改善によいアサリ、ホウレンソウを、クコの実を使ったドレッシングで和えたサラダ。冷凍ホウレンソウとアサリ缶で手軽に完成する一品です。クコの甘味とアサリのうま味が効いたドレッシングでホウレンソウがおいしくいただけます。クコの実を漬け込んだ「クコ酢」は多めに作って、いろいろな料理に使ってみてください。

【材料】2人分
●冷凍ホウレンソウ 150グラム
●アサリ缶 130グラム
●クコの実ドレッシング(クコの実=大さじ1、酢=大さじ1、しょうゆ=大さじ1、オリーブ油=大さじ1、コショウ=適量)

【作り方】
 クコの実を酢に漬けて30分ほど置き「クコ酢」を作る。冷凍ホウレンソウは袋の表示に従って解凍してボウルに入れ、アサリ缶の身を加える。全体を和えて器に盛り、クコ酢、しょうゆ、オリーブ油を混ぜ合わせてかける。

池田陽子

池田陽子

薬膳アテンダント・食文化ジャーナリスト・全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。国立北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)で国際中医薬膳師資格を取得。近著「1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日」が好評発売中。

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