健康長寿に役立つ高齢薬膳

【葛】発汗作用により筋肉の緊張を和らげ腱鞘炎や肩こりを改善

シナモンジンジャー葛湯(提供写真)
シナモンジンジャー葛湯(提供写真)

 指や手が痛くて動かしづらい、痛みがどんどんひどくなる……。年齢を重ねると、なかなか治りづらいのが腱鞘炎です。

 腱鞘炎とは、「腱鞘」が炎症を起こしている状態をいいます。腱は手や指を動かすための筋肉と骨をつなぐ組織で、これを保護するために包み込む役割を果たしているのが腱鞘です。

 手の使い過ぎによって、腱鞘のすべりが悪くスムーズに動かなくなったり、摩擦が生じると炎症が引き起こされます。主に指や手首で起きやすく、痛み、腫れがみられ、無理をして動かすと、どんどん症状が悪化しがちです。

 手を酷使する職業の人に多い疾患でしたが、最近はパソコンやスマホの操作が原因で引き起こされるケースが増えています。また、年齢を重ねると腱や腱鞘は硬くなり、血行も滞るため、シニアは腱鞘炎になりやすく、なかなか治りづらい傾向があります。

 初めは指や手首を動かしたときに瞬間的な痛みが走るケースが多く、重症化するとひきつるような強い痛みになり、症状が腕全体に広がる場合もあります。適切な治療とともに、食養生で早めに症状の軽減を図りましょう。

 腱鞘炎を改善するためには、発汗を促して、緊張した筋肉を緩める食材を取り入れることが大切です。

 おすすめは葛。葛は薬膳においてとても重要な食材です。マメ科の植物で、葛の根から取ったでんぷんを粉にしたものが「葛粉」。そして、根そのものを乾燥させたものは生薬としても使われています。発汗作用によって、筋肉の緊張を和らげる優れた効果があり、症状の軽減に役立ちます。同様の働きから、肩こりの改善にも威力を発揮します。

 また、「葛根湯」でも知られるように、風邪のひき始めにも効果的。寒けがする、体の節々が痛いといった症状がみられる場合は、早めに取り入れると悪化を防止できます。

 そのほか、喉の渇きを鎮めたり、下痢の改善にもおすすめです。

 葛は、あまりなじみがないかもしれませんが、スーパーで葛粉が販売されています。少量の水でよく葛粉を溶かしたら鍋に入れ、さらに水を加えてとろんとするまで煮れば「葛湯」が完成。水ではなく、お茶やフルーツジュースを使ってもおいしくいただけます。

 葛の腱鞘炎を改善する効果を高めるためには、同様の効果があるショウガやシナモンなどと組み合わせるとよいでしょう。

▼シナモンジンジャー葛湯

 発汗を促し、筋肉の緊張を緩める葛、ショウガ、シナモンを組み合わせたレシピ。紅茶を使って香り豊かな葛湯に。風邪のひき始めにもおすすめのお茶です。

【材料】2人分

●葛粉 20グラム
●紅茶 2カップ
●ショウガ 1かけ
●シナモンスティック  2本
●ハチミツ 適量

【作り方】

 鍋に紅茶、葛粉、すりおろしたショウガ、ハチミツを加えてよく混ぜてから熱し、とろみがつくまで混ぜる。

 器に入れ、シナモンスティックを添える。

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池田陽子

池田陽子

薬膳アテンダント・食文化ジャーナリスト・全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。国立北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)で国際中医薬膳師資格を取得。近著「1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日」が好評発売中。

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