健康長寿に役立つ高齢薬膳

【サケ】全身を温めて消化機能を促進し胃を健やかに保つ

サケのクイックパンプキンスープ(提供写真)
サケのクイックパンプキンスープ(提供写真)

 冬の寒さはシニアの「胃」も直撃します。冬は胃の不調が起こりやすい季節なのです。加齢によって胃の働きは年々衰えます。老化により胃の粘膜が萎縮し、胃酸分泌が低下することによって防御機能の働きが悪くなります。そのため外からの刺激に弱くなり、胃の痛みが引き起こされやすくなるのです。

 気温の変化は胃のストレスになり、不調を引き起こす原因となります。また、冬はノロウイルスやロタウイルスなどによる感染性胃腸炎が増加します。免疫力が低下しているシニアは重症化するリスクが高いこともあり、この時季は胃の健康を保つ心がけが重要なのです。

 中医学では、冷えは胃の不調を引き起こす大きな原因になると考えます。気温、冷たい食べもの、飲みもの、生ものの食べすぎは胃に大きなダメージを与えます。また、中医学において消化をつかさどる臓器「脾」の働きが弱い人は冷え胃痛を引き起こしがち。このタイプは、胃痛以外にも、むくみがある、お腹がすくと胃が痛くなる、舌のふちにギザギザした歯の痕があるといった特徴も見られます。寒い時季はとくに注意が必要です。

 冬場に胃を健やかに保つためには、胃を温めて、その機能を高める食材を取り入れることが大切です。

 おすすめはサケ。胃を温めて消化機能を促進する効果が高い魚です。胃だけでなく、全身を温める優れた働きがあり、冬にはぜひ積極的に取り入れることをおすすめします。

 また、脾の働きを高めるとともに、人間のエネルギー源である「気」を補い、疲労回復や滋養強壮にも役立ちます。

 サケは取り入れやすいのも魅力です。コンビニの焼き鮭、サケフレーク、サケ缶などを使いこなしてみましょう。とくにサケ缶はさまざまな応用が利きます。コンビニのカップみそ汁や、カップスープに身と缶汁適量を加えると、健康効果が高まるうえに缶汁のうまみで味わいがグッとアップ。ぜひ、試してみてください。

 冷え胃痛の場合、サケは加熱調理で取り入れることが大切なポイントです。そして、胃や体を冷やす、トマト、キュウリ、レタスなどの夏野菜は控えること。当然ながら、氷が入った冷たい飲みものやアイスクリームなどのデザートは慎みましょう。

 冷えによる胃痛の改善を図るためには、サケと同様に胃を温めて消化を促進する効能があるカボチャ、ニンニク、山椒などを組み合わせるとよいでしょう。

 鍋物がうれしいこの季節、これらを「石狩鍋」に使ってみては? 具材にカボチャを加え、ニンニクや山椒を効かせれば「薬膳石狩鍋」の完成です。

■サケの高齢薬膳レシピ

サケのクイックパンプキンスープ

 冷えによる胃痛によいサケ、カボチャ、ニンニクを組み合わせたスープ。市販のカップスープを使えばアッという間に完成。サケのうまみでコクのある仕上がりです。朝食にもぴったり。

<材料>2人分
●サケ缶(90グラム)  1缶
●カップパンプキンスープ  2個
●ニンニク  適量

<作り方>
 カップスープを規定通り作り、サケ缶の身と缶汁、ニンニクのすりおろしを入れて混ぜる。

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池田陽子

池田陽子

薬膳アテンダント・食文化ジャーナリスト・全日本さば連合会広報担当サバジェンヌ。国立北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)で国際中医薬膳師資格を取得。近著「1日1つで今より良くなる ゆる薬膳。365日」が好評発売中。

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