年々、ものが見えづらい、かすんできた……。視力の低下は40代から始まり、60歳を越えると急激に進むといわれています。加齢による眼球や周囲の組織変化によって視力は下がっていきます。
そして高齢になるほど、白内障、緑内障、加齢黄斑変性症、網膜静脈閉塞症といった視力の低下、最悪の場合は失明に至る病気のリスクが高まります。
またシニアの場合、とくに夜間視力が低下しがち。加齢に伴う身体機能の低下によって、瞳孔の開閉力が落ちることや、明るさに応じて瞳孔を調節する機能が衰えることが原因とされています。
視力の低下は、日々の行動が制限されたり、刺激が減ることによって認知症やうつ病の引き金になりかねません。視力はまた、歩く時のバランスを保つための大きな役割を果たしているので、転倒のリスクも高まります。食養生で“目力”を高めましょう。
目は、中医学で「肝」と呼ばれる臓器と関わりが深いと考えます。肝の機能が低下すると、視力低下や眼精疲労などのトラブルが引き起こされやすくなるのです。改善のためには肝の働きを強める食材を取り入れることが大切です。
おすすめはシジミ。肝の機能を強めて目に栄養をしっかりと送り届けて、視力向上、そして老眼、疲れ目改善に威力を発揮します。
また、シジミは薬膳においても二日酔い改善に役立ちますが、それ以外にも非常に優れたさまざまな効能があります。解毒作用に優れ、体から老廃物を追い出す働きが高い食材です。健康で美しい体をつくるためには不足しているものを補うことも大切ですが、中医学では「余分なものを排泄すること」も重要だと考えます。得てして、現代人は食生活が豊かな分、「補い過ぎている」傾向があり、毒素や老廃物をため込みがち。その結果、体調不良を引き起こしたり、太りやすくなる、肌が荒れるといったトラブルの原因になってしまいます。シジミは体内をリセットし、「体のゴミ出し」に役立つのです。
また水分代謝をアップして利尿を促す作用があり、むくみ、排尿異常の改善にもおすすめ。二日酔い以外にも、もっと積極的に取り入れていただきたい食材です。
シジミを使った料理というと「シジミ汁」くらいしか思い浮かばない人も多いかもしれませんが、野菜などと組み合わせるのもおすすめです。野菜にシジミのうまみが染みて、おいしく仕上がります。
また、加齢による視力低下には、老化をつかさどる臓器「腎」の働きを高める食材を取り入れると、より効果が高まります。ナガイモ、ブロッコリー、黒キクラゲ、海藻類などと組み合わせるとよいでしょう。 (水曜掲載)
■シジミ高齢薬膳レシピ
シジミとろろ丼
視力低下予防に良いシジミと、腎のパワーアップを図るナガイモと海苔を組み合わせたレシピ。市販のカップシジミ味噌汁で手軽に調理できます。シジミのうまみが利いたとろろは、コクがあり食が進む一品。
【材料】1人分
●カップシジミ味噌汁 1個
●ナガイモ 20センチ
●ご飯 丼1杯
●刻み青ネギ、もみ海苔、山椒 適量
【作り方】
カップシジミ味噌汁は2分の1カップの湯で溶かしてボウルに入れ、すりおろしたナガイモも加えて全体を和える。丼に盛ったご飯にかけて、青ネギともみ海苔をちらし、山椒をふる。
新著「中年女子のゆる薬膳。」(文化出版局)が好評発売中。
健康長寿に役立つ高齢薬膳