国家資格合格率データを読む(3)歯科医師国家試験合格率

(表1)国公立 2021年歯科医師国家試験 新卒合格率とストレート合格率
(表1)国公立 2021年歯科医師国家試験 新卒合格率とストレート合格率

 今回の歯科医師国家試験(国試)合格率は、新卒者が77.3%、既卒者も含めて63.7%でした。新卒者合格率が90%を超えたところが3学部あったそうです。ただし新卒者の中には、留年生も含まれています。

 歯学部は全国で国立11学部、公立1学部、私立17学部の合計29学部です。1985年度まで、入学定員は3380人でしたが、翌年から定員削減が始まり、2022年度入試では、2636人となっています。

 虫歯予防の進歩や少子化・高齢化によって、治すべき歯の絶対数が減少したことが影響しています。歯科は病院のポストが限られているため、歯科医師の大半が開業を目指します。直近の調査で、全国の一般診療所(医科診療所)が約10万5000軒に対し、歯科診療所は約6万8000軒に達しています。競争激化のため、共倒れが懸念されているのです。

 受験生の歯科離れも深刻です。とくに私立では、入試倍率が2倍に達しない学部が目立ってきました。「誰でも入れる」とは言い過ぎですが、偏差値が50以下のところも出てきています。2022年度は、そんな逆風が吹き荒れるなかでの国試でした。

(表2)私大 2021年歯科医師国家試験 新卒合格率とストレート合格率
(表2)私大 2021年歯科医師国家試験 新卒合格率とストレート合格率
昨年度は国公立全体で66.5%、私立全体では44.7%

 今回の国試の詳細な数字はまだ公開されていませんが、昨年度の数字は出ています(各大学の医学部医学科の入学状況及び国家試験結果等:文部科学省)。その中の「修業年限(6年)での歯科医師国家試験合格率」を見てみましょう。留年せずに6年間で卒業でき、しかも国試に合格したストレート組の割合です。

 結果は国公立全体で66.5%、私立全体では44.7%でした。最も良かったのは岡山大学(85.4%)、次いで九州歯科大学(77.9%)、鹿児島大学(71.7%)などとなっています。

 私立では東京歯科大学(71.1%)と昭和大学(70.4%)が高い数字を出しています。しかしほとんどが50%に達しておらず、鶴見大学(29.5%)、日本歯科大学新潟生命歯学部(26.0%)、岩手医科大学(25.5%)は、際立って低い数字になっています。

(表1)に国公立大学、(表2)に私立大学の公表されている新卒合格率と、国試ストレート合格率を載せておきました。新卒合格率とストレート合格率との乖離が大きい大学が目立ちます。歯学部進学を考えている方は、ご参考にするといいかもしれません。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

関連記事