人生100年時代の保険術

老後を考えて保険で買えない「安心」にお金をかけるべき

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 これからは今までにはなかった不安がドンドン増えていき、保険で買える安心は少なくなっていくでしょう。

 例えば孤独です。あなたは単身者ですか、それとも家族と一緒に暮らしていますか。

 政府の調査によれば、50代男性の4人に1人が結婚経験なし。離婚や死別も加えれば、なんと3割が単身者。しかも年齢が若くなるほど、その割合が高くなっているのです。

 今は元気で、気楽な一人暮らしを楽しんでいても、高齢になるにつれて心細くなってくるはずです。会社にいる限り、同僚たちと関係を維持できます。定年後も働き続ければ、社会とのつながりが切れることはありません。

 しかし完全にリタイアした後は、長い“おひとりさま”生活が待っているのです。もちろん妻帯者だって安心できません。妻に先立たれれば、子供と同居していない限り単身者の仲間入りです。

 高齢者にとって、孤独はがんや心臓病よりも怖いといわれています。アメリカで行われた研究によれば、孤独は「たばこ1日15本分」のリスクに匹敵するとか。それで早死にできれば、むしろ歓迎かもしれません。でもたばこ15本では、そう簡単に死ねないでしょう。心と体をじわじわとむしばまれ、衰弱しているところを発見されて、病院に収容される可能性が高そうです。もちろん病院ではみとってくれませんから、そのための施設で最期を迎えることになるのです。

 そんな寂しい老後を避けるためには、保険が役に立つでしょうか? それよりも孤独対策を始めることが大切です。もちろん筆者も始めています。数年前から大学や高校の同窓会を主催したり、町内会の役員を務めたりしています。以前の職場の同僚たちとも、ときどき会っています。そうしたつながりが、老後の「安全保障」に役立つはずです。

 地元のサークルなどに入るのもいいでしょう。ハイキング、野菜作りなどを通じて、社会との接点が数多く用意されています。

 もちろんSNSも有効です。高齢者でも、家族や友人とLINEを交換している人は大勢います。Facebookは友達づくりに役立ちます。最近は中高年による「ポケモンGO」のサークルが、全国各地で増えているとか。

 人生100年時代。保険にかけるお金を他に振り分けた方がこの先はるかに安心かもしれません。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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