人生100年時代の健康法

国もそのつもりで動き始めている 「死ねない時代」が到来

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「LIFE SHIFT~100年時代の人生戦略~」(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著、東洋経済新報社)を読まれた方も多いことでしょう。

 今の子供たちの平均寿命は100歳を超えていく、そんな来るべき長寿時代に対応するためには、人生設計の考え方から変えていかなければならない、といった内容です。

「人生100年だなんてまったくの絵空事」と思う人は、今ではほとんどいないはずです。ただし大多数の中高年にとっては、あまり心に響かない話かもしれません。

「自分も100歳近くまで生きそうだ」と本気で思っている人は、ほとんどいないでしょう。試しに大学時代の友人や職場の同僚に、何歳ぐらいを人生のゴールにしているのか聞いてみてください。大半が70代か、せいぜい80歳と答えるはずです。あなた自身、78歳ぐらいだと思ってはいませんか。

 しかし事態はもっと深刻です。国もそのつもりで動き始めているのです。たとえば厚生労働省が高校生に、年金の仕組みを説明するために作成した資料があります。その最初の項のタイトルが「100歳まで生きるが当たり前の時代に?」です。本文には次のように書かれています。

「みなさんがお年寄りになるころには100歳まで生きるのが当たり前になっているかもしれません」「ちなみに100歳以上の高齢者は1980年には1000人以下(968人)でしたが、2012年ではその50倍の5万人を超えています。そうした点を考慮すると、95歳くらいまで生きる前提で老後の生活設計をした方がよいかもしれません」

 この資料が作られたのは2013年。つまり「LIFE SHIFT」の出版の3年前です。国はその時点ですでに「人生100年時代」が到来することを予見していたのです。そして高校生に対して、せめて95歳を基準に人生設計をするようにと促しているのです。

 当時の高校生(16~18歳)は、今では大学生や社会人(21~23歳)に達しています。

 その世代が95歳以上生きるのが当たり前とするならば、中高年も90歳前後を基準に老後設計を立て直す必要がありそうだということを、理解できるのではないでしょうか。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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