人生100年時代の健康法

個別化栄養 遺伝子に即して食事を取ればやせられるのか?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 ダイエットは永遠のテーマです。なにしろ万人に有効なダイエット方法など、いままで誰も発見できていないのです。「食べなければ痩せる」は道理かもしれませんが、それでも痩せる早さには個人差があります。まして現代人は、食べてラクして、なおかつ痩せたいのですから、なかなか話が進みません。

 流行の低炭水化物ダイエットはどうでしょう。炭水化物こそ肥満の元凶だというのですが、厳密な研究によって、「炭水化物で太る人がいる半面、脂肪で太る人もいて、双方の割合はほぼ互角」ということが明らかになっています。また、何をいくら食べても太らない人もいれば、すぐに太ってしまう人もいます。

 体重だけではありません。同じような食事をしていても、人によって血糖値や中性脂肪がかなり違っていることもよくあります。

 おそらく、体質の個人差によるものでしょう。そしてそれは、各人の遺伝的要因、つまりゲノムに左右されているはずです。つまり太りやすさや血糖値、中性脂肪を支配しているのは、ゲノムの可能性が高いということです。だとしたら、各人のゲノムに即した栄養管理、つまり「個別化栄養」ができるはずなのです。

 では食事に由来する生活習慣病のリスクに、ゲノムは実際どのくらい関与しているのでしょうか。

 この種の研究には、確立された方法があります。双子のデータを集めて解析するのです。一卵性のゲノムはまったく同じですから、同じ家庭(つまり同じ環境)で育っていれば、食事に対する感受性が同じはずです。あるいは片方が養子に出されていれば、異なる環境がどのくらい影響するかが分かります。

 また二卵性の双子なら、ゲノムは50%一致しています。同様にして、同じ環境、違う環境において、ゲノムと体質がどのくらい関わっているかを調べることができるのです。

 そこでアメリカやヨーロッパで大規模な研究が行われたのですが、期待に反して食事に対する感受性は、ゲノムからさほど影響を受けていないことが分かったのでした。ゲノムの影響は、高く見積もってもせいぜい50%です。では他に何が影響しているのでしょうか。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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