血液型と病気

「全がんリスク」が高い血液型は? メタアナリシス解析で判明

写真はイメージ
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 血液型は胃がんや膵臓がんの発生リスクと関係していますし、肺がんの予後にも関与しています。では、ほかのがんではどうでしょうか。

 過去に発表された多数の論文を総合的に評価する「メタアナリシス」解析で、全がんリスク(すべてのがんに対する総合的なリスク)は、O型を「1」とすると非O型が「1.2」、とくにA型(AB型を含む)では「1.3以上」という数字が出ています。つまりA抗原を持っている人がもっともがんになりやすく、O型は相対的になりにくく、B型はその中間というわけです。

 個別のがんで見ると、子宮頚がんで、非O型のリスクがO型の1.3倍となっています。ただ子宮頚がんの多くは、ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因になっており、ワクチンでかなり防げます。世界的にワクチンの普及が進んでいるため(日本だけは滞っていますが)、今後は数字が変わってくるはずです。

 乳がんは、A型のリスクが1.2~1.3倍と評価されています。しかし近年、アメリカで行われた大規模な調査では、ほとんど差が見られなかったので、今後評価が変わるかもしれません。大腸がんも、非O型がなりやすいという結果が多いものの、無関係とする結果も無視できず、評価が定まっていません。ほかにも、子宮がん、一部の皮膚がん、口腔がん、唾液腺がんなどの名前が挙がっていますが、評価は分かれています。

 ただ、A型が全がんリスクが高いというのは、世界的にコンセンサスが得られています。なぜ、A型なのでしょうか。有力な仮説のひとつを紹介しましょう。

 前回も述べたように、細胞ががん化すると、組織血液型抗原が減少します。しかし、A抗原または類似物質を作り出すがん細胞があることが分かってきたのです。たとえばB型やO型の人ががんにかかると、そのがん細胞の表面では、本来あるはずのB抗原やH抗原(O抗原)が減りますが、代わりにA抗原が出てくるがん細胞がいるわけです。

 ところがB型やO型の血液には、A抗原を攻撃する抗体が存在します。そのためA抗原を持っているがん細胞は、この抗体の攻撃にさらされます。一方、A型の人のがん細胞では、A抗原が減るか、そのままか、どちらかです。A型の血液中にはA抗原を攻撃する抗体は存在しませんから、がん細胞が攻撃にさらされることもありません。この違いが、がんのなりやすさに影響しているのではないか、というのです。

 ただし、まだ実証には至っていません。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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