健康指標の意味を知る

【尿酸値】が高いのはデメリットだけではない 認知症リスクが低下する

悪いことばかりじゃない。尿酸にはポリフェノールをしのぐ抗酸化作用が
悪いことばかりじゃない。尿酸にはポリフェノールをしのぐ抗酸化作用が

 尿酸値が上がると、痛風だけでなく、尿路結石のリスクも上がります。痛風患者の数%から10%以上が尿路結石を合併するそうです。尿路結石の痛みは、あらゆる病気の中で最強クラス、しかも何度も繰り返していると、慢性腎不全に進むこともあります。それだけでなく動脈硬化のリスク因子ですし、不整脈や糖尿病のリスクも上がることが知られています。

 ですから、尿酸値を適度にコントロールすることが大切なのですが、高いからといって、悪いことばかりとは限りません。じつは尿酸値が高いと、アルツハイマー病を含む認知症のリスクが低くなることが知られているのです。各国の大規模な疫学調査などから、高い人は低い人と比べて、認知症が30%前後も少ないことが、明らかになりつつあります。尿酸には、ポリフェノールをしのぐ抗酸化作用があり、それが老化から脳細胞を守っているのではないか、と考えられています。

 また尿酸値の低い人は、パーキンソン病や多発性硬化症などの神経難病に、約10%ほどかかりやすいことも分かってきました。理由は上と同様で、尿酸が少ないと、神経細胞を酸化から守る力が弱いからではないか、と考えられています。

 まだ医療界のコンセンサスが得られていませんが、もし本当なら、尿酸値が高いのは脳神経の病気の予防という点で有利であると言えそうです。健診で尿酸値が引っかかった人は、自分は認知症になりにくい体質だと思っておけば、少し気が楽になるでしょう。

 一方、かなり以前から、尿酸値が高い人はがんになりにくいと言われていました。がんも細胞や遺伝子のさび(酸化)が原因のひとつだからです。また尿酸のがん予防効果を示唆する研究結果も報告されてきました。しかし最近は、尿酸値と発がんは無関係とする研究結果が増えている上に、むしろがんにかかりやすいという結果も出てきており、徐々に分が悪くなってきています。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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