心臓の異常を調べる検査で、主に「不整脈」と「虚血性心疾患(狭心症など)」のスクリーニングに用いられています。
心臓には洞結節と呼ばれる部位があり、そこから電流が発生して、統率のとれた拍動を繰り返すのです。この電流を測定し、波形を調べることで心臓の異常を見つけます。
拍動のリズムが乱れるのが、不整脈です。洞結節に異常があったり、洞結節以外の場所から2次的に電流が発生したりするのが原因です。不整脈には放っておいても大丈夫というものもあれば、突然死の原因となるものもあります。
虚血性心疾患は、心臓の冠動脈が動脈硬化で狭くなったり詰まったりする病気です。狭まるのが狭心症で、詰まるのは心筋梗塞です。ただし自覚症状や発作がある人は、普通はすでに病院を受診していますから、健診で初めて見つかるのは自覚症状のない軽い狭心症などです。
心電図検査は健診の定番ですが、問題点がいくつかあります。
ひとつは計測時間が短いことです。普通は10秒か20秒、丁寧にやっているところでも、せいぜい30秒です。そのため、いつ起こるか分からない不整脈は、ほとんど捉えることができません。
また結果の判定にも問題があります。健診の心電図は、コンピューターによる自動判定になっていますが、見逃しを減らすために判定基準を厳しく設定しています。そのため「異常」と判定される人がかなり多いのです。40歳以上の特定健診では、男性の約35%、女性の約29%に達しています。とくに65歳以上の男性では60%以上が異常と判定されているのです。
ただし健診結果を見ると、大半の人は「経過観察」となっています。健診の最後に行われる診察で、医師が問診票をチェックし、聴診器を当て、心電図と見比べて、とくに問題なければ「経過観察」とするのです。「要精密検査」の割合までは分かりませんが、かなり少ないといわれています。
永田宏
長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授
筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。