ワンランク上の健診「脳ドック」(1)CTでなくMRIを使う理由

CTではなくMRIを使う理由は…
CTではなくMRIを使う理由は…(C)日刊ゲンダイ

 厚労省発表によると、サラリーマンの多くが実質的な定年を迎える65歳時の最新の平均余命は男性19.44年、女性24.30年。男性は85歳、女性は90歳近く生きることになる。その間、元気で楽しく過ごしたい。そのためには、中高年が発症しやすい病気に関連したワンランク上の健診を受けるのが望ましい。

 長浜バイオ大学メディカルバイオサイエンス学科の永田宏教授に話を聞いた。

 健康志向の強いビジネスパーソンや、これからが心配な中高年の間で特定の臓器や病気に焦点を当てた「専門ドック」が注目を集めています。どんな検査で何がわかるのか。今回は代表的な専門ドックである「脳ドック」について見ていくことにします。

「脳ドック」はまだ受けたことがない人でも、一度は耳にしたことがあるはずです。ごく簡単に言えば、「MRI」という装置を使って、脳の輪切り(断層映像)を撮影するというものです。60歳や65歳といった、人生の節目で受ける人が多いですが、50代や40代で受ける人も少しずつ増えています。

 脳の輪切りと言えば、CTのほうが有名かもしれません。しかし、脳ドックで使われているのは、いま言ったようにMRIのほうです。CTは脳内の細かい出血などを検出するのに向いています。それに対してMRIは、脳のしわや全体の構造、脳梗塞や脳腫瘍などの病変を見つけるのに適しています。

 また、CTはX線の被ばくがありますが、MRIは核磁気共鳴と呼ばれる原理が使われており、X線や放射線を一切使わないため、被ばくの心配がありません。さらにMRIは、MRAと呼ばれる、脳血管のみを写し出した3次元画像を作ることもできます。CTで同じことをやろうとすると、造影剤を血管に注入する必要がありますが、MRAでは造影剤がいりません。

 それらの理由から、脳ドックではMRIが標準的に使われているのです。

 典型的な脳ドックは、頭部MRIと頭部MRA、それに血圧、心電図と、一般的な血液検査がセットになっています。また普通は頚動脈エコー(超音波検査)も入っています。それらの検査で、どんなことが分かるのでしょうか? 次回詳しくお話しします。(つづく)

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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