健康格差は年収格差

足立区vs港区 短命層の仕事と生活習慣はどう違うのか

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 東京・足立区と港区の現役世代は、どのような職業に就いているのでしょうか。「国勢調査」をもとに見ていきましょう。

〈表〉は両区民が従事している産業のうち特に差が大きいものを抜き出したものです。まず注目すべきは製造業。足立区の全労働者の11.4%が従事しているのに対し、港区は5.7%にとどまっています。足立区は町工場などで働いている人が多く、港区は大手メーカーの本社・東京支社のホワイトカラーが多いことが容易に想像できます。

 建設業や運輸業でも大きな差が見られます。足立区で建設業と言ったら、やはりガテン系が多いでしょう。運輸業もトラックやタクシーの運転手、宅配ドライバーなどが多いのではないでしょうか。

■飲食店の喫煙率の違いも

 港区に多いのは、専門・技術サービス業の人たちです。広告代理店、法律事務所、シンクタンクなどです。

 情報通信業(電話、テレビ局、新聞社、出版社、インターネット情報配信サービスなど)や金融・保険関係、不動産関係も港区のほうが、比率が高くなっています。大ざっぱに言えば、港区は頭脳労働に就いている人が多く、足立区は単純労働・肉体労働者が多いと言えそうです。

 港区は単身者が多いのですが、大企業のホワイトカラーに勤めている人が多いため、会社で充実した健診や人間ドックを受けているはずです。また異業種交流会やスポーツジムなどに参加している人も多いでしょう。社会とのつながりは健康維持に大切です。

 足立区は相対的に単身者が少ないのですが、仕事のストレスを解消するために、夕方からひとりで飲み始める人が大勢います。そのための安い居酒屋も充実しています。喫煙率も高めです。

 あるIT企業が2015年に行った調査によれば、港区や渋谷区の飲食店禁煙率は20%前後、対する足立区や葛飾区は8%前後でした。

 平均所得が低いのは、中小企業などに勤めている人が多いことを意味します。職場健診の内容は、大企業と比べるとかなり見劣りするはずです。

 また自分の健康に関心が薄ければ、健診で「異常」と言われても、あまり気にしないでしょう。

 以上が足立区の現役世代の平均余命が低い理由と考えられるのです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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