中高年の意外な死因

年間合計25人が死亡 「脱腸」「盲腸」を侮ると死ぬことも

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 私の友人が昨年、鼠径ヘルニアの手術を受けました。いわゆる“脱腸”です。腸の一部が本来の位置からずれて、鼠径部つまり足の付け根のあたりの皮膚を内側から押すため、その部分がデベソのように膨らんでしまうのです。しかも力んだりすると、より大きく膨らんだり、痛みを伴ったりします。とはいえ、一般的には子供の病気とされているため、60歳近いオジサンが脱腸になるなんて、「がん」と言われるよりも驚きの“大事件”だったそうです。

 本人いわく、その前日、孫と遊園地に行き、年甲斐もなくジェットコースターに乗ったそうです。そのとき受けたG(加速度)が原因に違いないと、主治医ともども納得したそうです。

 本当にGの影響かどうかはさておき、「たかが脱腸」と侮ってはいけません。治療は手術しかない上に、放っておくと腸が血行障害を起こして緊急手術ということも珍しくありません。しかも、ときには命を落とすことさえあるのです。

 実際、2016年の統計によれば、40~64歳の中高年男性13人が、鼠径ヘルニアで死にました。加えて、腸がヘソの部分に飛び出してくる“臍ヘルニア”で2人、腹壁の隙間から飛び出してくる“腹壁ヘルニア”で2人死んでいます。

 別の友人は一昨年、虫垂炎の手術を受けています。いわゆる“盲腸”です。こちらも子供の病気と思われがちですが、鼠径ヘルニアなどと同様、大人でもかかります。この友人は、お腹の尋常ではない痛みに襲われて、病院に駆け込んだのでした。すでに虫垂が大きく腫れていて、破裂する一歩手前だったそうです。そのまま即入院、即手術となって、事なきを得たのでよかったのですが、もう少し遅れていれば、虫垂にたまった膿が、お腹のなかにまき散らされて、かなり大ごとになっていたはずです。

 この年、虫垂炎で亡くなった中高年男性は8人でした。

 死因に良いも悪いもありませんが、とはいえ鼠径ヘルニアや虫垂炎で亡くなってしまったのでは、本人も家族も悔やんでも悔やみきれないに違いありません。「ひょっとしたら!?」と思ったら、恥ずかしがらずに外科を受診したほうがいいですよ。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

関連記事