データが語る 令和高齢者の実像

「寒さ」が死亡数に与える影響…1月は6月の3~4割増し

寒さは健康に大きな影響を与える
寒さは健康に大きな影響を与える

 12月に入って、ようやく冬らしい寒さがやってきました。しかし寒さは健康に大きな影響を与えます。たとえば総死亡数です。過去数十年にわたって1月が最多で、6月が最少になっています。1月は年間を通じて最も寒い時季、6月は本格的な暑さの前の比較的過ごしやすい時季です。

 では実際に、寒さはどのくらいの影響をもたらすのでしょうか。そこで人口動態調査(厚生労働省)の数字を使って、1月の総死亡数を6月の総死亡数で割った比(1.6月比)を計算してみました。すると過去20年以上にわたって、1.3~1.4という値になっていました。毎年、1月に亡くなる人数が、6月と比べて3~4割も多いということです。

 多くの医師は、寒さによる血圧上昇を理由に挙げています。高血圧、心疾患、脳血管疾患などで亡くなる人は、冬場に大幅に増えます(1.6月比1.4~1.5)。ただし、血圧と必ずしも関係しない肝疾患や腎疾患などでも、まったく同様の傾向がみられます。また胃潰瘍や腸閉塞では、1.4~1.8という数字になっています。

 一方で、がん死亡には季節差がほとんどみられません(1.6月比1.1)。どうやら血圧上昇だけが原因ではなさそうですが、それ以上の詳しいことはよく分かっていません。

 寒さといっても、戸外で働く人以外は、外気に当たる時間は限られています。ですから健康維持には、オフィスや自宅の室温が重要ということになります。北海道の住宅は暖房や断熱がしっかりしているため、本州や九州よりも暖かいという話を時々耳にします。東北や北陸でも、暖かい住宅の普及が進んでいるそうです。反対に南国の住宅は、夏の暑さに合わせてつくられているため、冬は意外と寒いといわれています。

 そこで都道府県ごとの1.6月比(2020年)を計算してみると、思わぬ結果が出てきました。1.6月比が最も小さいのは沖縄県(1.14)ですが、これは想定内でしょう。しかし2位以下は山形県、青森県、新潟県、北海道、石川県と続いており、寒い地域のほうが死亡数の季節差が小さくなっているのです。一方、季節差が最も大きいのは鳥取県(1.47)で、高知県、静岡県、大分県、宮崎県、和歌山県など温暖な県が、軒並み下位グループに入っています。

 つまり地域ごとの住宅事情が住民の健康に影響し、死亡の季節差にも大きな違いとなって表れている可能性が高いのです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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