感染症別 正しいクスリの使い方

【つつが虫病】ダニの一種に刺されて… 刺し口、発熱、皮疹が主要三徴候

草むらに立ち入る場合は長袖、長ズボンを

 前回、日本紅斑熱と症状がよく似ている疾患として「つつが虫病」について少しだけ触れました。つつが虫病は、日本紅斑熱と同じくリケッチア(微生物)が原因となる感染症です。

 ダニの一種であるツツガムシに刺されることで、ダニが保有するつつが虫病リケッチアに感染してしまうのです。日本紅斑熱より潜伏期間は少し長めで、ツツガムシに刺されてから5~14日ほどで全身倦怠感、食欲不振とともに頭痛、悪寒、高熱などを伴って発症します。

 ツツガムシの刺し口が残っているのも特徴で、刺し口は直径1センチほどで黒いかさぶたのような形状をしていて、このような刺し口・発熱・皮疹をつつが虫病の「主要三徴候」と呼びます。日本紅斑熱とは異なり、皮疹は体幹に多く四肢には少ないという特徴もあります。

 治療が遅れたり重症の場合は、肺炎や脳炎症状を起こすケースもあるため、一刻も早く抗生物質による治療を行う必要があります。日本紅斑熱と同様にペニシリン系やセフェム系といったβ-ラクタム系抗生物質はリケッチアには無効なので注意が必要です。やはり他のリケッチアによる疾患と同様に、テトラサイクリン系抗生物質が有効で、第1選択薬として用いられます。

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荒川隆之

荒川隆之

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

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