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【カンジダ・アウリス】日本から報告された新種の真菌…高死亡率の感染症の原因に

写真はイメージ

「カンジダ・アウリス(Candida auris)」は、2009年に日本から報告された新種の真菌(カビ)です。70歳の女性の耳だれから見つかったため、ラテン語で耳を意味するaurisと名付けられました。

 発見当初は高齢者で外耳道炎を起こす程度で、病原性は高くないと思われていたのですが、近年、インド、南米、アフリカ、米国など多くの国で重症の全身性感染症を引き起こすことが報告されています。米国では22年に2300人超がカンジダ・アウリスに感染しており、米疾病対策センター(CDC)はカンジダ・アウリスが「恐るべき勢いで」広がっていると警鐘を鳴らしています。海外では1人の患者から始まった後、その病院や老人施設で死亡例を含む集団感染を引き起こし(アウトブレーク)、病棟閉鎖に至った事例も報告されているのです。

 カンジダ・アウリスは、免疫機能が低下したケースで重症の全身性感染症を引き起こすことが知られ、その死亡率は30~40%と推定されています。死亡率が高い原因として、「多くの抗真菌薬が効かない」ことが挙げられます。カンジダ・アウリスの8割は、一般的に最もよく使われる抗真菌薬のフルコナゾールに耐性を示し、5割は複数の抗真菌薬が効かない多剤耐性ともいわれているのです。

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荒川隆之

荒川隆之

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

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