上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

はやりの「16時間断食」は心臓にとってマイナスなのか

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 近年、効果が期待できるダイエット法として「16時間断食」が話題です。1日24時間のうちの16時間は一切何も食べず、残りの8時間は自由に好きなものを飲食してよいというダイエットです。われわれ人間は、通常は糖質をエネルギー源にして活動していますが、空腹の時間が続くと中性脂肪を分解して産生されるケトン体をエネルギー源として使うようになります。そのため、ダイエット効果が望めるというのです。

 また、人間は空腹状態が16時間を超えるとオートファジーという機能が体内で活性化します。飢餓状態になった細胞が生き残ろうとして古くなった細胞を自食し、新しい細胞に生まれ変わる仕組みがあるのです。このオートファジーは生活習慣病や感染症の予防、老化を抑える働きがあるとされていて、16時間断食は健康に良い食事法としても注目されていました。

 しかし、今年3月、アメリカ心臓協会の学術集会で発表された予備的研究の結果によると、インターミッテント・ファスティング(断続的断食)、中でも16時間断食は心血管疾患のリスクが上がる危険性があると報告され、話題になっているのです。

1 / 5 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

関連記事