「不登校」「ひきこもり」を考える

親子の世界観のズレの長期化で膨らむ「感情不全」

写真はイメージ

 前回まで、不登校やひきこもり、ひいては精神疾患の原因には「感情不全」が潜在し、それが生じる背景には親子間のボタンの掛け違いの影響が極めて大きいというお話をさせていただき、具体例として男性Aさんのケースを紹介しました。

 今回は、その対応の何が問題だったのだろうか?を振り返ってみましょう。実は、ご両親の対応自体は、正解とも言えるし不正解とも言えるのです。実際、弟さんには特に問題にならなかったのですから。一方で、兄であるAさんにはもう少し違ったアプローチができたのではないか?ということを、今となっては言えるかもしれません。つまり、お子さんの性格の繊細さや感受性といった個人差に合わせて、よりきめ細かい配慮があったか否か、ここが重要なポイントとなるのです。

 同じように育てていても、そこまでの繊細さを持ち合わせていない子であれば、たとえ多少親子のコミュニケーションとしては賛否あるようなものだったとしても、特に問題などなく「俺は俺」「私は私」とマイペースにすくすく育っていくケースも決して少なくありません。親子の行き違いが行き過ぎた場合には、ちゃんと自己主張もしてくれますから、親からみても問題点がわかりやすいですし、逆に本当に強さのある子は「この親には期待してもだめだ」と早々に親を見限り、家を出るという行動にも出られます。

1 / 4 ページ

最上悠

最上悠

うつ、不安、依存症などに多くの臨床経験を持つ。英国NHS家族療法の日本初の公認指導者資格取得者で、PTSDから高血圧にまで実証される「感情日記」提唱者として知られる。著書に「8050親の『傾聴』が子供を救う」(マキノ出版)「日記を書くと血圧が下がる 体と心が健康になる『感情日記』のつけ方」(CCCメディアハウス)などがある。

関連記事