当事者たちが明かす「医療のウラ側」

世界ではいまも年間5万5000人が「狂犬病」で死亡している

海外では不用意に動物に触らないこと(C)日刊ゲンダイ
40代内科勤務医

 そろそろ夏休みの旅行の計画を立てている方も多いことでしょう。中には、旅行会社には頼らずに自分自身で飛行機のチケットやホテルを手配する方もいると思います。

 そんな人に、ぜひともご理解いただきたいことがあります。それは狂犬病の恐怖です。日本では1957年以降、発症例がありません。“日本で絶滅している病気だから海外でも存在しないだろう”と思い込んでいる人がいますが、大間違いです。世界では、いまもなお毎年5万5000人(WHO=世界保健機関の推計)が狂犬病で死亡しています。

 この病気は狂犬病ウイルスを持っている犬に噛まれることで感染、1~3カ月潜伏し、発症すると強い不安感や一時的な精神錯乱、恐水症などの症状があらわれ、死に至ります。

 しかし、こういわれてもピンとこない人もいるはずです。“狂犬病で死ぬ人が出るような国には日本人旅行者が行くはずがない”。いいえ、中国や韓国、インドネシアなど日本人になじみの深い国でも、当たり前に狂犬病は存在します。インドなどは年間3万人近くが亡くなっています。

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