「認知症」を知るための20週間

99歳まで生きたトミちゃんに学ぶ幸せな最期へできること

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 2015年1月3日、「トミちゃん」こと有岡富子さんが息を引き取った。享年99。娘の陽子さんとともにトミちゃんを見送った「つどい場さくらちゃん」の丸尾多重子さんが言う。

「トミちゃんの人生は決して特別なものではない。望むなら、だれでも可能にできる生き方です」

 介護にかかわるさまざまな人が集まる「つどい場さくらちゃん」に、陽子さんと一緒にトミちゃんが訪れるようになったのは2006年。トミちゃんと陽子さんは2人暮らしで、とても仲の良い母娘だった。認知症と診断されたトミちゃんが“頼りになるお母ちゃん”では少しずつなくなっていくことを、当時の陽子さんは受け止められず、よく泣いていた。

 どんなに介護を一生懸命やっても、認知症は緩やかに進んでいく。やがてトミちゃんは陽子さんを娘と認識できなくなった。

 ある日のことだ。陽子さんが押す車イスが小さな段差に引っかかり、トミちゃんが放り出された。陽子さんはパニック状態になり、丸尾さんに「助けて!」と電話をかけた。丸尾さんや「つどい場さくらちゃん」のメンバーが駆けつけると、トミちゃんがハッキリ言った。

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