健康格差は年収格差

足立区vs港区 家族構成の違いも平均寿命に影響する

足立区は2世代3世代世帯が多い
足立区は2世代3世代世帯が多い(C)日刊ゲンダイ

 両区の健康格差を考えるうえで、世帯構成の比較も重要です。とくに単身者は生活習慣や食事が乱れがち。そのため50代の独身男性は、既婚男性と比べて3倍以上も死亡率が高いという数字も出ています。

 一方、家族が同居する世帯では、生活にリズムが生まれ、不規則になりにくくなります。食事も単身者は外食中心になりがちですが、家族なら自宅で作る機会が増えるため、より経済的に、より栄養豊富なものが食べられます。また高齢者では、体調不良や病気を家族がすぐに気付いてくれるため、大事に至る前に医療を受けるチャンスが増します。若い人と一緒にいることで、ボケ防止にもなります。

■足立区は2世代3世代世帯が多い

 足立区と港区の人口と世帯数を〈表〉にまとめました。足立区の人口は約68万人、世帯数は約31万世帯(1世帯当たり2・2人)、単身者は約12万9000人(人口の18・8%)です。対する港区は約21万人、世帯数は約11万(1世帯当たり1・9人)。単身者は5万6000人を超えており、人口の実に27・3%を占めています。区民の4人に1人以上が、1人暮らしというわけです。

 ただし65歳以上に限れば、足立区の単身者のほうが人口に占める割合が高くなっています(5・3%対4・9%)。港区には単身赴任が多いのでしょう。転勤になれば他所に移ってしまうし、定年まで住み続けた人も退職と同時に家族のもとに戻っていきます。独身者でも、ある程度の年齢になれば、生活コストがもっと低い地域に出ていくでしょう。多くの単身者にとって、港区は永住の地ではないことを数字が物語っています。

 一方、2世代世帯(いわゆる核家族)や3世代世帯の割合は、足立区のほうがかなり高くなっています。親子何代かにわたって住み続けている人がかなりの割合でいるため、まだ地域コミュニティーが残っており、濃い近所付き合いが続いていると思われます。足立区の高齢者は、港区の高齢者よりも、家族や昔馴染みのご近所さんと接する機会が多いのです。さらに人口当たりの公的な介護施設も、足立区のほうが充実しています。それらのことが、高齢になってからの平均余命に影響していると思われるのです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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